携帯電話番号ポータビリティ制度(MNP)が2006年10月24日にスタートするのを控え、2006年10月20日のWPCフォーラム基調講演には業界のキーパーソンたちが登壇。「番号ポータビリティ時代を勝ち抜くケータイビジネス戦略の行方」と題し、目前に迫ったMNPに向けて熱い討論を繰り広げた。

 登壇したのは、KDDIのau事業本部au商品企画本部モバイルサービス部長 重野卓氏、KLabの代表取締役CEO 真田哲弥氏、NTTドコモのプロダクト&サービス事業本部マルチメディアサービス部コンシューマサービス企画担当部長 前田義晃氏、インデックスの経営戦略局局長兼技術局局長 寺田眞治氏の4人。

KDDIのau事業本部au商品企画本部
モバイルサービス部長 重野卓氏
KLabの代表取締役CEO 真田哲弥氏
NTTドコモのプロダクト&サービス事業本部マルチメディアサービス部コンシューマサービス企画担当部長 前田義晃氏 インデックスの経営戦略局局長兼技術局局長 寺田眞治氏

 討論では、ビジネス面では携帯電話向けの広告収益、サービス面では検索サービスについて議論が集中した。各社、広告収益に注目しており、KDDIの重野氏は「CDMA1xWINでは現在8割が定額サービスを利用している。今後は、関連サービスについては無料で提供し、広告で収益をあげる仕組みを作り上げたい」とした。NTTドコモの前田氏も「非トラフィックビジネスを拡大していく必要がある」と述べた。さらに、携帯電話で電子マネーやクレジット機能などの決済方法が多様化することによって「携帯電話での決済が充実し、コンテンツが決済に近くなればなるほど広告単価が上がる」(KLab真田氏)と、そのマーケット拡大に期待を寄せた。

 一方、インデックスの寺田氏は携帯電話内の公式コンテンツへ広告を出稿する場合、自由にバナーを貼れない現状を説明。「成人向けの広告などが制限されることで、低年齢層ユーザーへの悪影響を防げるというプラス面はあるが、ビジネスの面から見ると、こうした出稿制限はマイナスに作用する」と市場拡大の難しさを強調した。

 検索サービスでは、グーグルの検索エンジンをいち早く取り入れたKDDIの重野氏が、その利用率の増加について説明。グーグルの検索エンジンを導入後、検索数と広告量が共に3倍になったという。

 今後は携帯向けサイトにSEO(検索エンジン最適化)が取り入れられていくことも予想されるが、「それにはまだ時間がかかる」(KLab真田氏)という。パソコン向けの検索エンジンでは、例えば多くのリンクが張られているWebサイトをトップにしたりとすでに多くのロジックが存在している。一方、携帯電話向けの検索エンジンでは「グーグルでさえもそのロジックがまだない状況。そのロジックが確立しない状況でいくらSEO対策をしてもうまくいかなくて当然」(KLab真田氏)なのだという。そのため、NTTドコモでは「グーグルなどひとつの検索エンジンを使うのではなく、複数の検索エンジンをウオッチしながら、どれが一番いいのか見極めようとしている段階」(前田氏)とした。

 今回の基調講演で興味深かったのは、KLabが前日行ったばかりというMNPに関するユーザーアンケート。登壇者もその結果を食い入るように見つめた。約3000人にアンケートを行った結果、そのうち8%がキャリア変更を希望しているという。KLabの真田氏は「半年前までは10%以上いた希望者も今では8%。変更を希望しないユーザーの半数以上は現在の自分のキャリアに満足しているのが現状」と解説する。なお、その8%の中で、移行先のキャリアとして最も希望が多かったのはauで60%、特にNTTドコモからauに移行したいと答えたユーザーは33%だった。

auに移行希望者が60%と圧倒的多数
「NTTドコモからauへ」の移行希望者が最も多い
料金が不満でキャリアを移行したいユーザーが半数を占めた
半数が現在利用している携帯電話に「満足している」と答えた
■変更履歴
記事中に掲載したKLab代表取締役CEO 真田哲弥氏の写真が誤っておりました。お詫びして訂正します。現在は正しい写真です。[2006/10/20 19:45]