腰リールの発明者である懸田剛氏
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腰リールのスタータ・キット
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 最近,「腰リール」と呼ばれるメモ術が話題になり,雑誌や新聞などでさかんに紹介されている。腰リールはもともと,鍵などを身に付けておくために腰に装着する巻き取りリールのこと。これにメモ帳とペンを取り付けることで,いつでもどこでも素早くメモを取れるようにする。2006年10月19日,腰リールに特化したイベントである「第一回 全日本腰リールカンファレンス」が開催された。

 まず,腰リールの発明者であるチェンジビジョンの懸田剛氏(写真上)が「腰リールと私」と題して講演を行った。最初に,eXtreme Programming(XP)の提唱者として有名なKent Beck氏から寄せられたカンファレンスへのメッセージを紹介。次に腰リールを発明した動機を語った。同氏は,30歳過ぎて記憶力,特に短期記憶が弱くなったのを切実に感じ,メモ帳を持ち歩きたいと思ったという。しかし,仕事でもスーツを着ないので,メモ帳やペンを入れておくポケットがない。そこで思いついたのが腰リールのシステムだ。

 腰リールは,自分が使いやすいルールを決めて自分で改良していけるのが魅力。同氏のやり方は「1ページ1アイテム」「日付を記入する」「黒ペンだと見返す気がしないので黒以外の色を使う」「歩きながら思いついたときに立ち止まってすぐにメモ」「会話の最中だと一言断ってからすぐにメモ」といった具合である。懸田剛氏は最後に「ほかの方法だと,いいと言われた製品を買って使うだけ。一方,腰リールは自分でどんどん好きなようにカスタマイズできる。いわば消費者ではなく生産者側に立てる」と腰リールの魅力をまとめた。

 引き続き,腰リールの先駆者であるチェンジビジョンの水越明哉氏によるワークショップが開催された。腰リールを使ったことのない人は,会場で1個1000円で販売されていたスタータ・キット(写真下)を使い,腰リールの組み立て方や使い方を実体験した。水越氏は「どこまで書いたかすぐにわかるように端を折っておく」といったTipsも紹介。一方,腰リール上級者は,ハトメ・パンチなどを使ったカスタマイズに挑戦した。

 4人の発表者によるライトニング・トークスも行われた。あまのりょー氏は,腰などに付けるフックの「カラビナ」と野外使用を目的とした頑丈な手帳である「野帳」の使い方を紹介した。原敬一氏は,ペンとメモ帳を別々の腰リールにすることで両手で素早くメモを取る方法や,メモ帳の表紙に幅広の透明テープを貼っておくことで耐久性や耐水性を高める方法など,多くの工夫を披露した。和田卓人氏は,同氏がきっかけになった腰リールのブレイクの経緯を解説。amapyon氏は,リールを胸ポケットに付けるというやり方や「万歩計と間違われる」といった腰リーラーならではの苦労を語った。引き続き行われた懇親会では腰リールによる速記競争が行われるなど,終始,和気あいあいとした雰囲気のイベントになった。