初回会合の開催に先立ってあいさつする菅義偉総務相
初回会合の開催に先立ってあいさつする菅義偉総務相
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 総務省は10月19日,情報通信(ICT)分野の国際競争力強化を目的にする「ICT国際競争力懇談会」の初回会合を開催した。ICT国際競争力懇談会は,9月26日に総務大臣に就任した菅義偉(すが・よしひで)氏直轄のプロジェクトである。

 菅総務相は前政権で総務副大臣を務めており,前大臣の竹中平蔵氏とともに通信・放送改革を進めてきた人物。開催に先立って「日本はブロードバンドや第3世代携帯電話で世界のトップを走っている。だが残念なことに,ネットワーク機器やソフトウエアの世界シェアは決して高くない。国際競争力の向上が極めて大切だ」とあいさつした(写真)。さらに「情報通信産業を自動車産業と並び立つ産業に育てたい」と意気込みを語った。

 会合は非公開で,約2時間にわたって行われた。まず,今後の検討の進め方を議論したのち,各構成員が意見を述べたという。会合終了後に会見した座長の斉藤忠夫・東京大学名誉教授は,「日本の国際的なプレゼンスは下がっているという見解で一致した」とした。さらに,「ブロードバンドや携帯電話の普及では世界のトップを走っているし技術力もあるが,国際競争力との間にギャップがある。どうしたらプレゼンスを高められるのか検討する必要がある」(斉藤座長)と述べた。

 懇談会の会期は2007年4月までの半年間。菅総務相は「2007年4月をめどにICT国際競争力強化プログラムを策定したい」としており,懇談会の提言は政府で推進していく考えた。今後の検討はワーキング・グループ(WG)で進める。具体的には(1)次世代ネットワークWG,(2)ワイヤレスWG,(3)デジタル放送WG,(4)新ビジネス・基本戦略WGの四つのWGを設置。懇談会の次回会合は来年1月に開催する予定で,「それまでに各WGで2~4回程度の会合を開くことになる」(斉藤座長)。

 ICT国際競争力懇談会は,菅総務相が大臣就任直後から開催を示唆していたもの。会合のあいさつでも「副大臣時代から情報通信産業の国際競争力強化が必要だと痛感していた。(総務大臣に就任することが決まる前から)安倍首相に進言しようと考えていた」(菅総務相)と並々ならぬ思いを語った。大臣直轄の懇談会で短期に提言を打ち出そうというのは,竹中前大臣がとった手法と同様。今後の議論に注目したい。