写真1:米Intelのムーリー・エデン副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長
写真1:米Intelのムーリー・エデン副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長
[画像のクリックで拡大表示]
写真2:米国と西欧でもノートPCの割合が急増している
写真2:米国と西欧でもノートPCの割合が急増している
[画像のクリックで拡大表示]
写真3:エコノミー・クラスでは背もたれが倒れるとノートPCを広げられなくなる
写真3:エコノミー・クラスでは背もたれが倒れるとノートPCを広げられなくなる
[画像のクリックで拡大表示]
写真4:液晶パネルがスライドすれば,狭い空間でもノートPCを使い続けられる
写真4:液晶パネルがスライドすれば,狭い空間でもノートPCを使い続けられる
[画像のクリックで拡大表示]

 米Intelの副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長であるムーリー・エデン氏(写真1)は10月18日,同日開幕した「WPC TOKYO 2006」でノート・パソコンの将来像に関する基調講演を行った。エデン氏は「2007年は,次世代無線規格『WiMAX』と,次世代無線LAN規格『IEEE 802.11n』の普及の年になり,ユーザーの利便性が大きく向上する」と主張した。

 エデン氏は冒頭,「ノートブック・パソコン(以下ノートPC)が,現在のパソコン市場のけん引役になっている」と強調した。日本市場では既に,パソコンの出荷台数に占めるノートPCの割合が50%近くになっているが,米国や西欧でもノートPCの割合が高まっている。2002年の段階では,米国西欧とも20%台に過ぎなかったノートPCの割合が,2006年には西欧で50%弱,米国でも40%弱の水準に高まっている。2008年には両地域でも50%を突破する見込みだ(写真2)。

 エデン氏は「2003年にIntelが『Centrino』を出荷しだしたことが,ノートPCの成長に貢献した」と主張している。「デスクトップPCは企業や家庭内で共用されていたが,ノートPCは個人が占有している。ノートPCによって,PCは真にパーソナルな存在になった」(エデン氏)。

 またIntelは2006年にノートPC向けのデュアルコア・プロセッサを出荷し始めた。これについてエデン氏は「今,デュアルコア・プロセッサのノートPCを購入すれば,4年間は最新のアプリケーションを利用できるだろう」と訴えた。

「飛行機で使うノートPC」のコンセプト・モデル

 エデン氏は「Intelは,ノートPCをさらに発展させるために,様々な技術的な取り組みを継続している」と訴える。その例として,Intelが松下電池工業とバッテリー駆動時間を長くするための共同開発をしていることや,「新しいノートPCの可能性を,Intelが試作する『コンセプトPC』を通じて訴えている」(エデン氏)ことなどを取り上げた。

 基調講演では,「飛行機上での利用を考慮したノートPC」というコンセプトPCを披露した(写真3)。「エコノミー・クラスでは,前の座席の背もたれが倒れると,ノートPCを開いて使えなくなってしまう。そこでIntelは,液晶パネルがスライドするノートPCを提案している(写真4)。背もたれが倒れた狭い空間でも,液晶パネルを立て続けて映画などを視聴できるようになる」と訴えた。

2007年にノートPC用チップ・セットを強化

 2007年には,ノートPC向けのチップ・セットを拡充する。「Santa Rosa」(開発コード名)というチップ・セットは,次世代無線LAN規格である「IEEE802.11n」に対応するほか,統合グラフィックス機能がさらに強化される。またSanta Rosaで利用可能になる「Robson」(開発コード名)という技術を使用すると,ハードディスクのデータをキャッシュするNAND型フラッシュ・メモリーの搭載が可能になり,パソコンの起動の高速化や,バッテリー駆動時間の改善が図られるという。このほかIntelは,次世代無線規格「WiMAX」用のチップの出荷を10月に開始している。

 エデン氏が強調したのは,IEEE802.11nやWiMAXの普及が2007年に始まることである。エデン氏は「IEEE 802.11nは,既存の無線LAN(IEEE 802.11b/g)と比較して速度が5倍以上向上するほか,無線の到達範囲も拡大する。低消費電力も実現する。またWiMAXが普及することで,数Mビット/秒の高速公衆無線通信が利用可能になる」と語った。

 WiMAXについては,日本でもKDDIやNTTドコモ,イー・アクセスやソフトバンクが2007年にサービスを開始する予定である。またナイジェリアでもWiMAXのサービスが開始されるほか,米国サンフランシスコの鉄道(カルトレイン)でも,WiMAXが利用できるようになるという。エデン氏は「WiMAXが普及すれば,ユーザーはリモートで何でもできるようになる。まもなく,1億人のユーザーがWiMAXデバイスを使うようになるだろう」と語った。