「日本では情報のデジタル化が進んでおり、家庭のライフスタイルは既に大きく進化している。デジタルカメラ、ブロードバンド接続、テレビ受信可能な携帯電話などの普及ぶりはその代表例だろう。ただし、企業のワークスタイルの改善には、いまだに多くの課題を残している。Windows VistaとOffice 2007の投入により、ワークスタイルの発展に貢献したい」。こう語るのは、マイクロソフト代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏。東京ビッグサイトで開幕した「WPC TOKYO 2006」の基調講演であいさつに立ち、日本市場で2007年1月に発売する新ソフト2製品をアピールした。

「ワークスタイル、この5年で大きく変化」

 基調講演では続いて、米MicrosoftでWindows Vistaの開発を手がけるWindowsクライアントマーケティング担当 副社長のマイケル・シーバート氏と、Office 2007の開発に携わるコーポレーションビジネス製品担当 副社長のクリス・カポセラ氏が登壇。両氏は、企業での働き方のスタイルが、ここ5年で大きく変わったと指摘した。

米Microsoftのシーバート氏(左)とカポセラ氏の両副社長

 この変化は、大きく3種類に分類できると両氏は説明する。第1に、ビジネスの規模が拡大したこと。法人組織や国・地域といった枠を超えた協業が増えている。しかし、ソフトウエアの多くはこうした幅広い協業を想定しておらず、必ずしも使いやすいとは言えない状況にある。第2に、インターネットへの常時接続や移動体通信といった環境が整ったこと。電子メールやインスタント・メッセンジャー(IM)ソフトをいつでも使えるようになったが、それに伴い受信メールが増えており、整理したり検索したりする必要が生じている。第3に、ガラス張りの経営が求められていること。法令に従って内部監査の文書を作成・蓄積したり、個人情報の入った文書やメモリーカードなどを厳重に管理する必要に迫られている。

 こうした背景を受けて、「Windows VistaとOffice 2007は、企業のIT投資のコストを下げ、セキュリティーを上げることを意識して設計した」(カポセラ氏)。さらに、顧客情報管理(CRM)を始めとする業務アプリケーションソフト「Microsoft Dynamics」や、クラスタ管理ソフト「Windows Compute Cluster Server 2003」などを相次いで出荷し、「マイクロソフトの過去20年の歴史上、最も多くの製品を投入する」(ヒューストン氏)としており、企業のワークスタイルの改善を図る方針だ。

Vista、Office 2007のデモに息をのむ来場者

 プレゼンテーションに続いて会場では、開発中のWindows VistaとOffice 2007のデモを実施した。Windows Vistaでは、3次元デスクトップ機能の「Windows Aero」によりウインドウを立体表示したり、エクスプローラのプレビュー表示でWordやExcel形式のファイルの内容まで閲覧したり、USBメモリーをパソコンにつないでWindowsの仮想メモリー領域として利用するなどした。

Windows Vistaを1000人以上の観客の前で披露 タスクバーを開く前に、内容をプレビューできる
ノートパソコンにUSBメモリーを挿し、仮想メモリー代わりに使える 「ReadyBoost Cache」が、増設分の仮想メモリー

 Office 2007では、「タブ」と「リボン」で構成された新メニューを次々に切り替えて表示したり、セルの値に応じて背景色を変化させたり、フォントの変更時に「ライブプレビュー」機能で変更後の画面をリアルタイムで確認したり、立体的でカラフルなグラフを作成してみせたりした。

Office 2007のデモ。Excelのセルに「条件付き書式」を付けると、データをわかりやすく表示できる 従来のOfficeは56色しか使えなかったが、Office 2007はフルカラーで描画が可能。カラフルなグラフも簡単に作れる

 気になる発売時期については、「予定通り2007年1月に一般消費者向けに発売する」と明言。Windows Vistaが動作可能なパソコンに貼付される「Windows Vista Premium Ready」「Windows Vista Basic」のロゴも披露した。

 1000人収容の会場は満員。さらに立ち見の来場者も多く押しかけた。デモでは多くの機能を短時間で次々に披露し、来場者はその一つひとつに息をのんで見入っていた。

今後パソコンに貼付されるWindows Vistaのロゴ。CPUやメモリー、グラフィックスなどのスペックにより2種類に分けられる