原信の独自の思想が色濃く反映された物流センター
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 新潟県で食品スーパーを57店舗展開する原信ナルスホールディングスは2008年度までに基幹システムと物流センターを刷新して、ローコスト経営に磨きをかける。そして2010年度には、売上高経常利益率を今期予定の3.2%から4.5%まで引き上げる。達成できれば、スーパー業界では高い経常利益率になる。

 原信ナルスは今年4月に、新潟県内の食品スーパー同士である原信とナルスが経営統合して誕生した。早期に統合効果を出すため、同社は今期から段階的に基幹システムを刷新。まずは、この11月に新しい発注システムを稼働させる。今後は新しいEDI(電子データ交換)システムや電子商談システムなどを順次稼働させていく計画だ。

 さらに2008年には、上越エリアに新しい物流センターを開設する。既存の原信とナルスの両センターも含めて、担当する配送エリアを再編成し、物流効率を高める。

 新センターは現在稼働している原信の「長岡センター」をベースにして構築する。長岡センターは、青果などの冷蔵品と日用品などの非冷蔵品を区別せずに1カ所ですべて仕分けする、業界でも珍しい物流センターだ。ここで全店分の商品を1時間当たり8000ケースの速さで店別に仕分けし、店舗に食品や日用品を一括納品することで、店舗での荷受けや品出しの手間を極力省いている。この独自の物流センターが原信のローコスト経営を支えてきた。

袋詰めにこだわる原信の日本一のサービス

 原信は単にローコストだけを追求してきたわけではない。以前から「日本一のサービス」を掲げ、その象徴として1998年からレジでの商品の袋詰めサービスを続けてきた。「お客様には少しでも楽にお買い物をしてほしい」(原信ナルスホールディングスの山岸豊後取締役)からだ。

 原信は98年当時、経常利益率が約4%と、業界でもトップクラスの数値を誇っていた。その時、原信一社長が「オペレーションコストがかさみ、減益になっても構わないから、お客様に喜ばれる袋詰めサービスを全店で始める」と宣言。実際、利益率が3%台まで落ちても袋詰めを推進してきた経緯がある。

 レジ係が処理スピードを落とさずに、1人で会計と袋詰めを同時にこなせるように、原信は専用のショッピングカートや買い物袋、袋詰め台まで開発してきたほどのこだわりだ。現在利用している袋詰めに適した独自開発のレジは、8世代目に当たる。

 袋詰めサービスは原信の「代名詞」として、今ではすっかり定着している。今年の下期中には経営統合したナルスでも袋詰めのテストを開始する予定で、「来期中にはナルスの全15店で開始したい」(ホールディングスの山崎軍太郎会長)としている。

 コストがかさむ袋詰めを実践しても、まだ3%台の経常利益率を確保できる計算が成り立つほど収益が安定していた原信だが、2003年には大きな危機に直面する。ベイシアなど他県に本部を構える総合スーパーの新潟出店が相次ぎ、小売りの「新潟戦争」が勃発した。値引き合戦が横行し、原信も追随したため、経常利益率はついに半分の1.5%まで落ちた。

 追い打ちをかけるように、2004年と2005年には水害や大地震、豪雪が新潟を襲う。だがこの時、原信の社員が自身も被災者でありながら地元の復旧に尽力したことで、「地元のお客様から改めて、お店の信頼をいただけるようになった」(山岸取締役)。結果的に新潟戦争にも勝ち残り、今では経常利益率が再び3%台まで戻った。

 ここからは改めてローコスト経営を加速させ、2010年度には経常利益率を再び4%台まで持ち上げる。