写真 FLOフォーラムのカミール・グラジスキ プレジデント
写真 FLOフォーラムのカミール・グラジスキ プレジデント
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 クアルコムジャパンは10月16日,FLOフォーラム プレジデントのカミール・グラジスキ氏によるMediaFLOの現状に関する説明会を開催した。グラジスキ氏は,前職は米クアルコムのエンジニアリング担当副社長。FLOフォーラムには出向の形で籍を移している。

 MediaFLOは,米クアルコムが中心に推進している携帯電話向け放送技術。FLOフォーラムは,MediaFLOの標準規格の作成・提案などを実施する業界団体だ。その役割について,グラジスキ・プレジデントは「大きく三つの役割がある。一つは標準化の促進,二つめは周波数確保の支援,三つめは製品やサービスが標準規格に準じていることの認証の支援である」と説明した。FLOフォーラムには,通信事業者,放送・通信機器メーカー,測定機器メーカーなど68社が参加する。日本からはKDDI,京セラ,三洋電機,シャープ,アンリツの5社が名を連ねている。

 標準化の進捗について,「無線インタフェースなどコアのスペックは,米TIA(Telecommunication Industries Association:米国通信工業会)から10月までに標準規格が出版された。これにより,半導体メーカーや測定機器メーカーは,すぐにでも製品を開発できる段階にある」(グラジスキ・プレジデント)とした。ただし,サービス全体の標準化は完了していない。具体的には,映像コーデック,EPG(電子番組ガイド)の配信方法,国や地域の識別コードなどは標準化作業の途上にある。こうした技術の標準化時期は「言える段階にはない」(グラジスキ・プレジデント)とした。

 MediaFLOの商用サービスは,2006年末に米ベライゾン・ワイヤレスが開始予定。しかし,標準化はこの時期までには間に合わない。そのため,ベライゾンはクアルコム独自の方式でサービスを開始する。グラジスキ・プレジデントは「標準化作業も並行して実施するため,追いつける部分もあるだろう。またクアルコムは後方互換を確保する方針を示しており,ほかの多くのメーカーも同様の方針と聞いている」と,早期に導入しても互換性に問題は出ないとの見解を示した。

 なお欧州でも,イギリスの衛星放送会社であるBSkyBがMediaFLOのトライアルを実施中とした。

 MediaFLOで利用する電波は,「各国の事業者が,周波数を確保するよう政府当局に働きかけている」(グラジスキ・プレジデント)。日本では,アナログ放送の跡地であるUHF/VHF帯の利用を検討している(関連記事)。また,「タイミングさえ合えば,FLOフォーラムからITU(国際電気通信連合)に対し,世界で共通の周波数を配分するよう働きかける可能性もある」(同)とコメントした。