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 「Linux環境を特許侵害訴訟から守るため,申請中のものを含めこれまでに約100件の特許を購入している。例えば倒産した米Commerce Oneの特許35件は1500万ドル(約18億円)で買い入れた」---米Open Invention Network(OIN)CEOのJerry Rosenthal氏は同社の活動をこう語る。

 Open Invention Network(OIN)は2005年10月,米IBM,米Red Hat,Novell,ソニー,蘭フィリップスが共同で設立した特許管理会社である(関連記事)。企業から特許を買い取り,Linux環境に対して特許権を行使しないこと(その企業がすでに保有している特許を含む)を条件に,OINが保有する特許の無償での使用を許諾する。2005年10月にはNECもOINへの出資を発表した。

 OINが対象とするLinux環境とは,カーネルだけでなくApacheやPerl,PHP,PostgreSQL,postfix,gnome,KDEなどのアプリケーション,ミドルウエア,コマンドなども含まれる(OINが対象とするLinuxコンポーネントのリスト)。

 Linux環境への特許権非行使に同意した企業へは無償で特許の使用を許諾するため収入はないが,Rosenthal氏は「金額は明らかにできないが6社からの豊富な出資金がある。そのため,特許を購入するための資金は潤沢」としている。

 現在のところ,OINが特許利用を許諾した企業はOINに出資した6社にとどまる。「設立後1年は特許ポートフォリオを作るための購入に注力していた。今後は特許利用を許諾するライセンシを増やすことに力を入れる」(Rosenthal氏)という。来日の目的もライセンシの募集にある。中国や韓国も訪問しライセンシとなることを呼びかけたという。

 OINがやろうとしていることは,特許保有企業に対し,OINが保有する特許と引き換えにLinux環境への特許開放への合意を取り付けるという一種のクロスライセンスと言える。ただし,クロスライセンスは自ら開発を行い他社の特許も利用する企業には有効だが,開発を行わずただ特許の使用料だけを求めるいわゆるパテント・トロールに対しては効果的な対策とはなりにくい。Rosenthal氏は「パテント・トロールに対抗するために我々は特許を購入していく。しかしもちろんすべての特許を購入できるわけではなく,特許の濫用を制限するなど政府レベルでの対応も必要になってくるだろう」との見方を示した。