日揮情報ソフトウェア(J-SYS)は10月13日、韓国ITPlusのアプリケーション・ポートフォリオ・マネジメント(APM)ツール「ChangeMinerシリーズ」の販売を開始した。あわせて同日より、J-SYSらベンダー3社は、ChangeMinerを利用したITガバナンスのコンサルティング・サービスで協業することも発表。「既存システムをChangeMinerで可視化すれば情報システム部は改修速度を必ず上げられる。経営層の要望にこたえられる情報システム部を築くことができる」(J-SYSの岩田アキラ常務取締役)。

 ChangeMinerシリーズは5製品から成る。(1)シリーズの中心となる「ChangeMiner Suite v4.0」は、プログラム同士の呼び出しやプログラムからデータベースへの呼び出しといった、相関関係を自動的に分析する。CRUD(作成、参照、更新、削除)図を出力したり、プログラム改変時の影響範囲の分析に利用できる。さらに投資効果や生産性、品質管理をビジュアルに表示するダッシュボード機能を備える。解析可能な開発言語は、COBOL、C、Java、Visual Basic、C#などで、データベース管理システムではOracle、DB2、SQL Serverなど。

 そのほか四つの製品の概要は以下の通り。(2)「FlowMiner v1.0」はプログラム内のロジック構造を解析してフロー図を生成する機能を備える。(3)「ChangeFlow v4.0」はアプリケーションを改修する作業のワークフローやアプリケーションのバージョンを管理する。(4)「MetaMiner v2.0」はデータベース管理を支援する。メタデータやデータ・ディクショナリの一括管理に加え、論理データベースの設計機能を提供する。(5)「DQMiner v3.0」はデータベースの物理構造や値を分析して、不整合のあるデータを検出するなどのデータ品質管理に利用する。

 ITPlusのリ・スーヨンCEOによれば、2003年に韓国で販売開始したChangeMinerシリーズは「保守工程の生産性を20~30%向上できる」という。「IT投資の7割は保守費用に向けられるなかで、3割の削減は大きい」(J-SYSの岩田常務)。

 現在、現代自動車やウリィ銀行など約30社で導入実績があり、特に現代自動車では全社システムの半分にChangeMinerとChangeFlowを利用しているという。「保守工程の生産性と品質が向上した」(リCEO)ため、現代自動車は今後、ツールを全社展開していくという。

 初年度の保守費用込みの税別価格は、ChangeMiner Suiteが280万円から、ChangeFlowが400万円から、MetaMinerが450万円から。FlowMinerとDQMinerの価格は現在調整中だが、前者が100万円から200万円、後者が2プロセサ当たり2000万円からとなる見込み。出荷はChangeMiner Suiteが10月13日で、それ以外はJ-SYSによる日本語化が終了次第、11月から順次出荷する。

 J-SYSはAPMツールの日本国内における市場規模について、2008年度には70億~100億円になると予測。売り上げ目標については06年度は1億円だが、市場の立ち上がりに合わせる形で08年度は40億円に設定している。

 国内で協業した3社の顔ぶれは、J-SYS、アイ・ティ・イノベーション、データ総研である。役割分担は、J-SYSがツールの提供と顧客ごとのカスタマイズを提供し、IT戦略策定のコンサルティングやプロジェクト・マネジメント支援などを手がけるアイ・ティ・イノベーションが、構成管理や品質管理のプロセスを提供する。DOA(データ中心アプローチ)に基づく開発方法論を提唱するデータ総研は、モデリング技術を提供する。

 アイ・ティ・イノベーションの林衛社長は、「日本ではほとんど構成管理や変更管理がなされていないし、されていたとしても手作業のため時間が経つとルールが守られなくなる」と語る。さらにデータ総研の黒澤基博社長は「連結経営が進む現状の中、情報システム部にとって全社的なマスター統一が喫緊の課題になっているが、作業量の多さから調査段階でつまづく企業が多い」という。3社は一致して、ChangeMinerシリーズが既存アプリケーションの分析や構成管理・変更管理プロセスの自動化に効果を発揮する点を評価。「十数年の付き合いがある中で、初めて協業した」(J-SYSの岩田常務)。

 提供するサービスは四つ。まず、DQMinerを使って既存のデータ品質の向上を図るのが「データクオリティ診断サービス」である。ERP導入時などに効果があるという。次に「システム可視化サービス」では、ブラックボックス化した既存システムについて、アプリケーションやデータの構造を見える化する。ChangeMiner Suite、FlowMiner、MetaMinerを利用する。

 3番目がシステム統合時に、異なったアプリケーションのコードやマスターを統一する「コード統一・マスター統一サービス」だ。DQMinerを使って、データを整備する。最後がアプリケーションの保守業務のプロセスを標準化する「システム保守プロセス標準策定サービス」。ChangeMinerシリーズの各製品を組み合わせて、変更要求のステータス管理や変更管理といったプロセスを標準化するほか、開発者の暗黙知をナレッジ化することも提供していく。