ケータイ酸素缶「オーツーサプリ」を共同開発したセブン-イレブン・ジャパンの小堀洋司氏(左)と、白元の内木桂氏(右)
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 セブン-イレブン・ジャパンと白元がチームを組んで共同開発した「ケータイ酸素缶」が売れている。5月24日にセブン-イレブンのオリジナル商品として発売した酸素缶「オーツーサプリ」は、発売から約3カ月で80万本が売れ、年末までには120万~130万本を販売できる勢いだ。これは発売当初に想定した2倍以上の販売ペースだという。

 コンビニで販売する雑貨カテゴリーの商品としては、セブン-イレブン社内でも驚きの声が上がるほどの異例のヒットになったケータイ酸素缶。その開発には、丸2年の歳月が費やされた。特に、開発に着手した2004年6月からの最初の1年間は苦しい時間の連続だったという。

 健康分野の新商品開発を議論する過程で、「酸素」というキーワードで意見が一致したセブン-イレブンと白元だったが、具体策を話し合うなかでは「消費者は本当にお金を払ってまで酸素を買ってくれるのだろうか?」という不安と疑問を頭から消し去れなかった。

悩んでいないで、テスト販売を2回実施

 そこで両社は考えてばかりいないで、店舗で実験してみることにした。昨年7月に東京のセブン-イレブン本部に近い8店舗に、スポーツ選手や登山客が使う市販の細長い酸素缶を並べてみたところ、「びっくりするほど売れた。酸素でリフレッシュしたい人は大勢いた」(セブン-イレブン商品本部雑貨部の小堀洋司マーチャンダイザー)。これでコンビニでの「酸素需要」に確信を持てた両社は、本格的に商品化に踏み出す。

 発売の3カ月前に当たる今年3月には、関東エリアの250店舗で、現在と同じ形状と価格のケータイ酸素缶を試験発売。するとテスト販売に用意した数量が足りなくなるほどの大きな反響があったため、すぐさまこの春の加盟店オーナー向けの商品説明会で大きく商品をアピール。店舗での販売推奨を実施した。それが5月末の発売直後のスタートダッシュにつながった。

 今ではよく売れる店舗では、1本600円する酸素缶(約35回使用可能)がコンスタントに1日約20本ずつ売れていくという。発売から3カ月ほどでリピーターがついた証拠だ。

 両社は酸素缶を繰り返し使ってもらうために、無臭の酸素に「香り」を付加することにこだわった。2種類用意した商品のうち、「頭脳カン」にはペパーミント、「カラダカン」にはグレープフルーツの香りを付けた。既に売れた80万本のうち、両商品の販売比率は6:4だが、リピート率が高いのはカラダカンのほうだ。

 元々この商品は日常生活の中で利用する「吸うサプリメント」をうたった商品で、そのような商品はこれまでほかになかった。想定顧客はストレスを抱える30~40代のビジネスパーソンであり、実際に購入している人の多くはこの層に合致している。

 ただし、意外だったのは平日よりも週末に売れていること。車のドライバーが眠気覚ましに使ったり、ゴルファーがプレー前にセブン-イレブンに立ち寄って買っていくことも多いという。受験生を抱える親が子供に酸素を買い与えるといった使われ方も出てきた。ある海外メディアは「勤勉な日本人は酸素を補給してまで働いている」と紹介したほどだ。

 これまでなかった日常使いの酸素缶には海外のバイヤーも興味を示しており、白元には既に何件もの取引の打診があった。だがオーツーサプリはセブン-イレブンとの共同開発商品なので、「すべて断っている状態だ」(白元プロダクトマーケティング部プロダクトマネジメントの内木桂氏)。

 両社は9月末に、新たな香料を加えた「しあわせカン」と「なごみカン」を追加発売。セブン-イレブンは健康商品の売り場をより一層充実させて、酸素缶の日常使いをアピールする。他のコンビニが追随するかにも注目が集まる。