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 P2Pファイル共有ソフトWinnyの暗号を解いたことで知られるネットエージェント代表取締役の杉浦隆幸氏は2006年10月6日,東京で開催されたセキュリティ関連のイベント「Black Hat Japan 2006 Briefings」でWinnyネットワークの現状について発表した。同社はWinnyネットワークのモニタリングを行っている。

 杉浦氏によると,現在のWinnyのユーザー数は1日40万~45万人。休日になると増えるという。このユーザー数は,ISPのアカウントで接続している人の約1%に相当する。

 やり取りされているメインのコンテンツは,3年前はゲームやアダルト動画,音楽だったが,現在はアニメーションである。深夜に放送されているアニメや地域によっては見られないアニメが中心だ。コンテンツのダウンロード数上位30位のうち,27個くらいがアニメになっている。例えば,人気アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」をWinnyを使って試聴したのは約5000人と推定されるという。「視聴率を左右するほどではないが,流行の一翼を担っている」(杉浦氏)。

 2番目はアダルト動画。子供でも手軽に手に入るのは問題だと杉浦氏は語る。3番目が音楽。流行ものが多いが,音楽は嗜好が幅広いので,1点集中というよりはロングテール傾向だという。同氏は「アーチストが好きな人はCDを買っている。権利者団体が強いのは音楽と映画だが,そこはそれほど被害を受けていないんじゃないか」と印象を述べた。

 杉浦氏は,Winnyに特化したウイルスであるAntinnyについても触れた。Winnyでやり取りされている数百万個のファイルのうち,約3%が感染しているという。感染歴がある人は数万人程度。Antinnyを作るツールも存在しているため,毎週,何十種類も(亜種が)増えている。ウイルスの種類が多い分,個々の流通量は少なく,ウイルス対策ベンダーに報告されることは少ない。このため,十分な対策がなされていない。「(情報漏洩)事件になったウイルスのうち,約半数はベンダーが対応していない新種」(同氏)。Antinnyによる情報漏洩は,新聞などで公になったものは200件程度だが,ある公的機関には毎月70件以上が報告されているという。