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パネルディスカッションの様子

 10月5日、東京都内の経団連会館で「新・地方自治フォーラム」の設立記念シンポジウムが開催された。

 基調講演には、竹中平蔵・前総務大臣が登場し、小泉首相の元で取り組んだ行政改革について講演した。その中で地方自治体への権限移譲について触れ、「地方自治体は現在、財政面での自由度は余りないが、代わりに責任も負わずに済んでいる」と指摘。「今後は地方交付税の改革と税源移譲が進み、自由と同時に責任も負わなければならなくなる。各自治体が、自分たちの裁量でやっていく覚悟が求められる」と結んだ。

 その後に行われた「今後の行財政改革について」と題したパネルディスカッションには、パネリストとして前宮城県知事の浅野史郎・慶応大学総合政策学部教授、前佐賀市長の木下敏之・富士通総研経済研究所客員研究員、福嶋浩彦・千葉県我孫子市長、吉岡広小路・広島県三次市長の4氏が登壇。それぞれ首長として自治体経営に携わった経験を元に、活発な意見交換を行った。

 木下氏は「既に地方では老齢化が進んで財政状況が急速に悪化しているが、数年後には団塊の世代がほぼ引退するので、都会の自治体でも同様の状況になる」と、人口減少社会を前提とした考え方や対策への転換が必要であることを力説した。浅野氏は「行財政改革というと、まず国対地方という構図が浮かんでくる。そうすると、納税者である市民にとって何が一番大切なことか、という視点が抜けがちになる」と警鐘を鳴らした。

 現役の首長である2氏は、それぞれの自治体での取り組みについて説明した。福嶋我孫子市長は、同市の1200の事業について民営化の提案を公募したところ、8月末で72件の応募があったことを紹介。「これからどの事業をどんな形で民間に委託するかを決める。その際は、市民にとって何がメリットになるかを基準にする」と説明した。吉岡三次市長は、指定管理者制度を237施設に導入して6400万円コストを削減したことや、広島県と「事務移譲具体化プログラム」を2005年度に開始し、全国の市町村で初めてパスポートの申請・交付事務の移譲を受けたことなどについて語った。

 「新・地方自治フォーラム」は、2006年7月に富士通総研と北海道大学公共政策大学院が共同で設立した。自治体の行財政制度やPPP(Public Private Partnership)に関する最新情報の提供、先進事例の紹介、それを基にした研究が目的。今後も年1回のペースでシンポジウムを開催するほか、2007年からフォーラム内に「新・地方自治研究会」というサブグループを、関東・関西・北海道の3カ所で設立して、それぞれ年4回程度の研究会を開催する計画である。