「企業がSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づいたシステムを構築する場合、CIO(最高情報責任者)は『CPIO』と『CITO』の2人に分かれるだろう」。SAPジャパンの技術者向けカンファレンス「SAP TechEd 06' TOKYO」の基調講演で独SAP インダストリー ソリューション ジェネラルマネージャーのジム・スナーペ氏はこう語った。CPIOは「チーフ・プロセス・イノベーション・オフィサー」、CITOは「チーフ・インフォメーション・テクノロジー・オフィサー」の略だ。

 スナーベ氏は、「SOAの時代には、ビジネスの変化に合わせながらアプリケーションを変更していくことが必要になる。一方で、アプリケーションを管理するためのITインフラが複雑になるため、ITインフラの管理がますます重要になっていく」と説明する。

 こうした時代には、「企業全体の情報化戦略を見渡すCIOではすべてをこなすせず、ビジネスの視点からシステムのあり方を考える人材と、ITインフラを適切に管理する人材が欠かせなくなる」(同氏)。前者を体現したのがCPIOで、後者がCITOである。「現状ではCPIOやCITOを置いた情報システム部門はないが、本格的にSOAに取り組む場合には両者が必要になるだろう」とスナーベ氏は強調する。

 基調講演ではこのほかに、独SAPが2007年に力を入れる施策について、(1)新たなユーザー・インタフェースの投入、(2)コンポジット(複合)アプリケーションの開発に必要なツールの充実、(3)エンドユーザーが情報を活用するためのツールの提供、(4)SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)と既存のインストール型を組み合わせた「ハイブリット型」でのアプリケーションの提供、の四つを挙げた。

 (1)については、マイクロソフトとの共同開発製品「Duet」で利用できる機能を増やしていくほか、開発中のリッチクライアント「Project Muse(開発コード名)」を2007年中に投入する。
 
 (2)では、プログラミングをせずに複数のWebサービスを組み合わせてコンポジット・アプリケーションを開発できる「NetWeaver Composition Environment」などの新製品を出荷する。このほか、コンポジット・アプリケーションを開発するパートナーの支援を強化する。

 (3)は、米IBM、米インテル、米ヒューレット・パッカード(HP)と共同開発した「Business Intelligence Accelerator(BIA)」や企業内検索ソフト「SAP Enterprise Search」で実現する。BIAはデータ分析を高速化するためのソフトウエアだ。米IBMや米HPのブレード・サーバーと組み合わせて利用する。(4)については、「すでに実施しているCRM(顧客関係管理)だけでなく、新たなアプリケーションでもハイブリット型を推進していきたい」(スナーベ氏)と述べるにとどまった。