PiTaPaのICカードと決済端末
PiTaPaのICカードと決済端末
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 関西私鉄連合の「スルッとKANSAI」(大阪市)が運営するICカードサービス「PiTaPa(ピタパ)」の利用が広がっている。9月下旬に会員数が50万人を突破。乗車券としての利用範囲は10月1日に拡大し、神戸市営地下鉄、大阪空港交通(空港リムジンバス)のほか、岡山電気軌道など関西以外の地区で初めて使えるようになる。

 PiTaPaショッピング(電子マネー)加盟店も1万店超に達した。乗車券としての利用範囲拡大に伴い、岡山市の百貨店などにも加盟店が広がっている。加盟店数では、JR東日本「Suica(スイカ)」の約9000店、JR西日本「ICOCA(イコカ)」の約100店などを上回る一大勢力に成長した。

 PiTaPaの新規加盟店は一部の例外を除いて、PiTaPa専用の端末ではなく、PiTaPaと三井住友カード・NTTドコモの携帯電話クレジット決済サービス「iD」の共通端末を導入している。既に、PiTaPa加盟店の約9割で「iD」も使える。

 PiTaPaを担当するスルッとKANSAI PiTaPaプロジェクトの松田圭史執行役員に、現状と今後の見通しについて聞いた。

――非接触の電子決済では、Suica、iD、QUICPay、Edyの4規格が端末共通化を発表する(関連記事「SuicaとEdyが端末共通化、電子マネー普及は新段階へ」)などの動きがある。PiTaPaの対応は?

 料金など条件面で合意できれば、4規格共通端末にPiTaPaが参加する可能性もあるし、本来はそうすべきだと思う。4者にとっても、関西地区で1万店以上の加盟店を持つPiTaPaを無視できないはず。関東で利便性の高い共用端末が広がるのに、関西で一部の決済サービスしか使えない状況は望ましくない。

――10月1日に阪急電鉄と阪神電気鉄道を傘下に収める阪急阪神ホールディングスが発足した。PiTaPaへの影響は?

 今後、PiTaPaに加盟する阪急と阪神で様々な連携が考えられる。例えば、現在同じ日に阪急のバスと鉄道の両方にPiTaPaを利用して乗車した場合、ポイントを付加するサービスをしている。ここに阪神も絡めることはあり得る。

 阪神大震災のときに阪神と阪急の路線網が寸断した経験から、阪急と阪神の磁気定期券の共通化は経営統合以前から実現している。ところが情報システムの負荷の問題から、PiTaPaでは定期券共通化が実現できていない。早期に磁気と同様のサービスができるよう開発を進めたい。

――関東地区では私鉄でのIC乗車券サービス「PASMO(パスモ)」は2007年春のサービス開始で、JR東日本との相互利用はまだ実現していない。関西地区では一足早く、私鉄の「PiTaPa」とJR西日本「ICOCA(イコカ)」の相互利用が始まった。

 相互利用開始時に、ICOCAのICカードはPiTaPaの10倍以上の枚数が普及しており、PiTaPaがあまり使われない懸念もあった。しかし、大阪市営地下鉄におけるICカードの利用は、PiTaPaとICOCAで7:3だったのが、8月には8:2になった。割引サービスや利便性の高さが顧客に理解されつつあるようだ。