図1:楽天の三木谷社長は,インターネットとテレビの位置づけを,メディアの影響力という観点で説明
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図2:ポイント・プログラムは,業種間のシナジー効果を高める上で有効。楽天市場の利用者が楽天トラベルのサービスを併用する比率は1年間で12%から20%に伸びた
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図3:楽天市場や楽天広場ブログには,ある利用者が買った商品についての意見が投稿され,別の利用者の購買を後押ししている
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 10月4日,楽天の三木谷浩史社長が「CEATEC Japan 2006」で講演し,「3年から5年以内に,インターネットがテレビ放送よりも有力なメディアになる。今は補完的と見られているネット・ショッピングは,近いうちに購買活動の主流になるだろう」と予測した。

 最初に三木谷氏は,楽天市場,楽天トラベル,楽天広場ブログが,それぞれEC,オンライン・トラベル,ブログの各インターネット・サービス市場で売上高1位であることを挙げ,成功の理由について語った。「一口にインターネット・ビジネスと言っても,Googleのようにトラフィックで勝負するビジネスではなく,会員サービスを充実させることで,楽天は成長してきた」(三木谷氏)。顧客獲得コストを抑えながら,提供するサービスを増やす,すなわち売り上げを伸ばす方法を追求してきたという。

 成果を上げた方法の一つが,ポイント・プログラムという販売促進の仕組みである。これは,EC,オンライン・トラベル,ローンなど複数のインターネット・サービスの間で,共通のポイントが使えるようにするもの。楽天は2000年に株式公開して以来,トラベル,金融,証券など様々な業界の企業を買収したが,「異業種間のシナジー効果を高める上でポイント・プログラムは極めて有効だった」と三木谷氏は話す。

 加えて楽天は,Web2.0の流れに乗り,ユーザ発信型コンテンツに早くから取り組み,売り上げ拡大に結びついている。例えば楽天市場では,利用者が買った商品について意見を書き込む「みんなのお買い物レビュー」という機能があり,これが別の利用者にとって重要な情報源になっている。現在750万件の書き込みがある。楽天広場ブログにも230万件の商品レビューが投稿されている。

 ブログを読んだユーザが商品を購入すれば,投稿者はアフィリエイトで楽天ポイントを獲得でき,そのポイントで商品を購入し,ブログを書いて,またポイントを獲得・・・・米国で「エコシステム」と呼ぶ自律完結型,あるいはそれに近いユーザ・モデルが生まれようとしている。

 今後,インターネット・ビジネスの世界はどうなるのか。「3年から5年以内に,情報の訴求力において,インターネットがテレビを上回るようになる。今は補完的と見られているネットショッピングも,近いうちに消費・購買活動の主流になる」と,三木谷氏は予測する。

 一方で,「想定外のことが起こり続けている」と同氏は語る。mixiの躍進は想定していなかったが,今では楽天にとって協調してサービス拡大を図っていくパートナーという。脅威を感じるのは,むしろこれまでパートナーだと思っていた会社が,急に新しいサービスに乗り出してくるケースだ。ロータス,ジャストシステム,マイクロソフトといったソフト・ベンダをとくに警戒する。「重要なことは,何が起きても対応できる体勢を整えておくこと。これまでもそうだったし,これからもそうだ」と,三木谷氏は勝ち残りへの意志を見せた。