MatrixStream Technologies CTO(最高技術責任者)のJack Chung氏
MatrixStream Technologies CTO(最高技術責任者)のJack Chung氏
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専用のセットトップボックス
専用のセットトップボックス
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 米国・カナダに拠点を持つMatrixStream Technologiesは10月2日,ハイビジョン映像を約2.5Mビット/秒のIPネットワークで配信する技術のデモを報道陣に公開した。同社の製品で構成したシステムでは,特許出願中の「XMSトランスポート」という伝送技術を使い,インターネットによるハイビジョン映像の配信ができる。デモでは不安定なネットワークでも画像の乱れが少ないことを強調するため,無線LANによってセットトップボックスと通信した。極めて動きの激しいシーンではノイズが目に付く場合もあったが,ほとんどのシーンはハイビジョンと呼んで問題ないレベルである。静止画に近い場合は,衛星放送と見まがう画質だった。

 今回のデモは,日本市場への参入をアピールするためのもの。本拠地である米国やカナダにさきがけて,日本市場を狙うという。日本のブロードバンド・サービス契約数は今年3月に2000万を超えた。インターネットを使った映像配信事業も立ち上がってきている。ただし,いまのところ標準のテレビ画質の事業がほとんど。そこで参入機会が大きいと見ている。

 日本でも1社がハイビジョン映像事業を始めているが,その配信技術は8Mbpsのバンド幅が必要なタイプ。MatrixStream Technologiesの技術は2.5Mbpsと半分に満たない上,QoS(Quality of Service)がないベストエフォートのネットワークでも画質の劣化が目立たない。それでいて,映像信号フォーマットは1020pと解像度の高いハイビジョン配信に対応している。映像の圧縮規格であるコーデックはH.264で,音声はAC3の5.1チャンネル・サラウンドで配信できる。

 デモでは,実際に消費している帯域幅を示すために,計測ソフトで転送速度をリアルタイム表示した。変動はあるが,2.0M~2.5Mbpsの間に収まっていた。一通りのハイビジョン映像を流したあとは,チャンネルの切り替えが早いことを示した。セットトップボックスのリモコンでチャンネルを切り替えると1秒強で,別のチャンネルに変わる。早送りや巻き戻しも可能だ。ただし,技術的な内容については,XMSトランスポートという伝送技術にあるとしか明かさなかった。

 ハイビジョン映像配信製品ベンダーとしては,映像を配信用に変換するビデオ・エンコーダからストリーミング・サーバー,端末であるセットトップボックスやPCビューア・ソフトまでをすべてを開発しているのが特徴という。約5000加入者程度をカバーできるアプライアンス・サーバー2台とセットトップボックス10台をセットにしたスターターキットが600万円。国内では富士ソフトが技術サポートを担当している。