日本IBMは10月3日、総務省系の独立行政法人、情報通信研究機構(NICT)との間で締結した2件の委託研究で、費用を誤請求していたと発表した。会計検査院の指示を受けた日本IBMの社内調査で発覚した。日本IBMは2件の研究費の合計約1億6000万円を全額返還する。

 誤請求の対象は2004年12月に受託した「ブロードバンド・プラットフォームにおける異機種混在システムの資源統合連携の動作状況モニタリング技術および自律制御技術の研究開発」。もう1件は2005年11月に受託した「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング技術の研究開発」に関する委託研究契約」。

 2件とも、「研究員の労働時間に応じて研究費を支払うが、上限値は決まっている」(NICT 連携研究部門委託研究グループ)という契約。ブロードバンド・プラットフォームの研究は上限値の5240万8440円が支払われた。視覚障害者向けの研究は上限に到達しなかったため実績の1億1089万6440円が支払額となったという。

 日本IBMによると「実際に研究に参加していない研究員の人件費まで織り込んでいた」(広報)という。誤請求の割合については現時点で明らかにしていないが、全額返還を決めた。

 今年7月、会計検査院がNICTに支払い内容を調査するように指摘、NICTが日本IBMに再検査を依頼していた。日本IBMの社内調査で問題が発覚した。「NICT側の規定に対する理解が不足しており、労務時間の記録が不十分な請求書を提出してしまった」(日本IBM広報)としている。日本IBMは2件の委託研究費となった約1億6000万円と、利子を返還する。日本IBMはNICTの研究開発案件に対する応募を3年間自粛する。

 NICTは10月4日に日本IBMの件も含め、会計検査院の指摘で行った研究費の調査結果について公表する見通し。日本IBM以外の誤請求が発覚する可能性もある。