写真1●米Intelの上級副社長兼デジタルホーム事業本部長のエリック・キム氏
 米Intel上級副社長兼デジタルホーム事業本部長のエリック・キム氏(写真1)は10月3日,「CEATEC JAPAN 2006」の基調講演で同社のホーム・ネットワーク戦略を説明した。

 キム氏はIntelの「Viiv」が単なるテレビ・パソコンの仕様ではなく,コンテンツ配信からホーム・ネットワークまでを網羅した「オープンなプラットフォーム」であることを強調した。その後の記者会見でも,セットトップ・ボックス(STB)や「Viivテレビ」といった非パソコンの「Viivクライアント」が「まもなく出荷されるだろう」と明かした。

Viivサーバーに蓄積したコンテンツを非PCのSTBで視聴

 基調講演でキム氏は,メディア・パソコン(Viivのホーム・サーバー)に蓄積されたHDコンテンツを,ネットワーク経由でHDTVに映し出すデモを行った。これだけなら従来のViivのデモと同じだが,今回のデモが違うのは,HDTVに接続されていたデバイスが,メディア・パソコンではなくSTBだったという点である(写真2)。基調講演ではSTBの機種を明らかにしなかったが,講演終了後に「Link Theater」のロゴがHDTVに映し出されていたので,デモに使われたSTBはバッファロー製であると見られる。

写真2●非パソコンのSTBを使ってHDTVにViivサーバー上のコンテンツを映し出したデモ。使われたSTBはバッファロー製「Link Theater」である模様

 米国ではまもなく,米DirecTVがViivに対応したSTBの出荷を開始する。キム氏は,Viivサーバーに蓄積されたコンテンツをHDTVなどに映し出せる「Viivクライアント」として機能するSTBや,Viivクライアントの機能を内蔵したHDTVが,DirecTV以外からもまもなく出荷されることを,基調講演後の記者会見で示唆した。

 このほか基調講演では,ViivのVPN(Virtual Private Network)機能のデモも行った。キム氏がソニーのUMPC(超小型携帯パソコン)である「VAIO type Uシリーズ」の内蔵カメラで写真を撮ると,その写真が即座にインターネット経由で「Viivサーバー」に転送された。

 「この機能があれば,幕張のCEATEC基調講演で撮った写真をすぐに自宅の家族に送り,HDTVに映して見てもらう,といったことができる」(キム氏)。ViivのVPN機能では,ホーム・ネットワーク内のViivサーバーが認証サーバーとして動作し,Viivクライアントに対してセキュアなアクセスを提供する。IntelはこのVPN機能を2007年に出荷するという。

Viivは「相互接続性」を重視している

 キム氏は「Viivはオープンなプラットフォームだ。Intelが提供するのは,パフォーマンスや機能,相互接続性の保証だけであって,アプリケーション(デバイス)は,製造者が独自に決められる。プラットフォームをオープンにすることによって,消費者の選択肢が増える」と主張している。

 Viivのホーム・ネットワークは「dlna」を基にしたもので,dlna対応クライアントとの相互接続性も高い。またViivのホーム・ネットワークでは,コンテンツ配信事業者が利用しているDRM(デジタル著作権管理技術)を「DTCP-IP」という業界標準のDRMに変換することで,相互接続性を確保するとしている。キム氏は相互接続性を強調することで,インターネット上のコンテンツ配信からテレビに映し出す末端まで,すべて独自の「Windows Media DRM」の仕様を強制する米Microsoftとの違いを打ち出している。

 キム氏は「日本はコンシューマー・エレクトロニクスの分野で間違いなく世界のリーダーであり,Intelは半導体分野で世界のリーダーだ。日本の家電メーカーがIntelとのシナジー効果を活用して,世界市場で活躍できるようになることを期待している」と語った。

 なお基調講演後の記者会見では,IntelとAppleの関係について質問が相次いだ。IntelがViivでホーム・ネットワークにおける動画配信を狙う一方で,Appleも「iTV」を発表して同分野に参入することを明らかにしているからだ。

 記者会見では「Intelはオープンなプラットフォームを主張しているが,Appleは『iPod』という非常に閉鎖的なプラットフォームを担いで,音楽分野で成功した。家電分野で成功するには,オープンなプラットフォームがいいのか,閉鎖的なプラットフォームがいいのか」という質問が出た。

 キム氏は「Appleが成功したのは,使いやすいソリューションを提供したから。Microsoftも『Zune』でこれをまねようとしている。しかし,閉鎖されたやり方が必ずしも良いとは限らない。閉鎖的なプラットフォームだと,消費者の選択肢が狭まる。インターネットがこれほど成功したのは,オープンだから。Appleは音楽分野で成功したが,動画配信やWeb 2.0アプリケーションといった分野で同じことができるかは疑問だ。Intelは様々な製品の基盤となるオープンなプラットフォームを提供する」と主張した。

 また「AppleにはViivに参加するよう交渉していないのか」という質問に対して,キム氏は「AppleはIntelのプロセサを100%採用すると言ってくれている。彼らがiTVなどでコンシューマ分野に参入しようとしているのは,われわれにとってもハッピーだ。しかし,Appleに対してIntelのプラットフォームを強制するようなことはしない。Apple自体がプラットフォームのようなものだからだ。われわれはAppleが必要とするものを提供するが,われわれからAppleに何かを押し付けるということはない」と答えた。