米アプリソのトム・コムストック マーケティング/製品担当上級副社長
米アプリソのトム・コムストック マーケティング/製品担当上級副社長
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 「製造業の多くが、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)をすでに利用している。実際、当社の顧客の半数以上が、独SAP製品のユーザーだ。だがERPだけで、製造業が要求するデータをリアルタイムで収集・管理するのは困難。当社の製品はこれを補完するものだ」。実行系SCM(サプライチェーン管理)ソフト「FlexNet」を開発・販売する米アプリソのトム・コムストック マーケティング/製品担当上級副社長(写真)は、こう話す。

 FlexNetは、製造・物流拠点における作業の進捗や機器の保全状況、生産品質などに関する情報をリアルタイムで収集し、監視・管理できるようにするソフト。製造・物流拠点が分散している場合でも、情報を一元管理できる。一連の業務プロセスを可視化・標準化するための機能も提供する。

 「ERPパッケージの多くは、主に財務にかかわるデータを軸として、ビジネスの視点から業務の統合管理を狙ったものだ。FlexNetをERPと併用することで、生産や物流の現場の状況までリアルタイムで把握できるようになる」(コムストック上級副社長)。SAPがアプリソに出資していることもあり、SAP製品と併用するケースが最も多い。同社製品の導入実績は、全世界で150社500サイトで、そのうち300サイト近くがSAP製品を利用しているという。

 同社が対象とするのは、自動車や航空・宇宙、電子機器、製薬/ライフサイエンス、鉄鋼・紙・パルプ、消費財といった製造業。これらの分野では、「実行系システムを強化しなければならないと考える企業が増えている」と、コムストック上級副社長は話す。ERPパッケージの導入がひと通り完了し、それをどう生かすかを考える時期に来ていることが、要因の一つ。同氏はこれに加えて、部材の調達先がグローバル化しており、管理が困難になっていることや、顧客からこれまで以上に厳しい品質管理体制が要求されていることを挙げる。

 日本法人のアプリソ・ジャパンは、導入パートナーとして新日鉄ソリューションズと東洋ビジネスエンジニアリング、コンサルティング・パートナーとしてヘッドストロング・ジャパンと協力して、ビジネスを展開している。日本では自動車部品のミツバや電子機器メーカーなど、4社12サイトの販売実績がある。年内に新たに2社とパートナー契約を結ぶ予定だ。

 「日本の製造業に売り込んでいくのは、いまがチャンス」とコムストック上級副社長はみる。上記の要因や、日本の景気が回復基調にあることに加えて、「日本の製造業はまだカスタム・アプリケーションを利用しているところが多い。だが、ビジネスの変化が激しく、ますますグローバル展開が進み、しかも『2007年問題』による人材不足が顕在化している。『もうシステムを手作りするのは限界』と考え、パッケージの採用を決める企業が多くなるのではないか」(同)。

 アプリソ・ジャパンは8月に、FlexNetシリーズの新製品「Global Manufacturing Suite」を出荷した。これは、グローバルに展開する複数の製造・物流拠点における作業状況を、一元的かつリアルタイムに管理・監視できるようにするもの。「以前は、主に地域単位あるいは国単位の管理を想定していたが、Global Manufacturing Suiteは世界に分散した拠点を対象にしている」(同)。こうした新製品の投入やパートナーの拡充によって、「日本での売上高は、今年は50%増を見込んでいる」と、コムストック上級副社長は話す。