経済産業省とその関連団体の流通システム開発センターは9月27日、2003年度から2005年度まで進めていた「流通サプライチェーン全体最適化事業(流通SCM事業)」の成果報告会を開催した。同時に、流通SCM事業の継続事業として今年度から3カ年計画で実施している「流通システム標準化事業(流通標準化事業)」の概要を説明。両事業の目的は、「データ共有化の仕組みを標準化して、流通業界全体を効率化すること」(経済産業省 商務流通グループ流通物流政策室の浅利賢司氏)である。

 流通SCM事業、流通標準化事業はともに、「商品マスターデータの同期化」と「次世代EDI(電子データ交換)の標準化」の二つを具体的な目的としている。昨年度までの流通SCM事業では、両者を実現するために必要な仕様の策定や、実証実験を実施した。今年度から始まった流通標準化事業では、実証実験の結果を基に、これまでに分かった課題や不足点を補って、流通業者が実務で利用できるようにしていく。

 流通標準化事業について浅利氏は、「国が主導したり、ITベンダーが主体になるような標準化は失敗する。実際にシステムを利用する小売業や、メーカー、卸が中心となって進めて頂きたい。経済産業省はこの取り組みをバックアップする」と強調した。

 商品マスターデータの同期化は、メーカーが商品マスターを入力すると、卸や小売業が持つ商品マスターのデータを自動的に更新する仕組みで実現する。昨年度の実証実験ではその第一歩として、メーカー、卸、小売の業種別に商品マスターを登録するデータベースである「データプール」を構築。データプールの構築・運用は、実証実験を請け負った野村総合研究所などが担当した。

 今年度の流通業標準化事業では、複数のデータプールをまとめる「ナショナル・レジストリ」への接続を実験する。これにより、昨年はメーカー、卸、小売に分断されていた商品マスターのデータの同期化が可能になる。

 商品マスターを同期化するのは、現状のマスターの入力作業が非効率なためだ。現状、ほとんどのメーカーや卸は、小売業が要請する仕様に合わせ、その都度、データを入力している。流通の段階で何度も同じデータを入力する作業が発生しているわけだ。

 もう一つの次世代EDIの標準化では、流通業全体で同じ仕様にのっとったEDIの普及を目指す。現在、EDIのメッセージの項目や形式、データ送信のルールの標準を策定している。

 昨年度の流通SCM事業では、ユーザー企業の団体である日本チェーンストア協会(JCA)と日本スーパーマーケット協会(JSA)の会員が中心となって、グロッサリ(日用雑貨・加工食品)分野のメッセージ項目の標準化を進めた。

 今年度からの流通標準化事業では、昨年策定したメッセージ項目が実際の業務で利用できるかを確認する。加えて、メッセージ項目の標準対象を、生鮮食料品やアパレルなどに広げていく。流通業では26年前に策定された「JCA(日本チェーンストア協会)手順」がもっとも普及しているが、「漢字や画像が送信できない」、「古い仕様のため、JCA手順用の機器が調達できない」などの問題が発生しているため、新しいEDIの仕様の策定が不可欠だった。