ITガバナンスの普及を目的とした「日本ITガバナンス協会(ITGI Japan)」が11月にも発足する。ITGI Japanは、ITベンダーなどの一般企業から資金を募り、ITガバナンス関連文書の日本語化を支援したり、調査研究を実施することを目的とした団体。設立の中心メンバーの一人であるISACA(情報システムコントロール協会)東京支部の梶本政利 理事は、「ITGI Japanにより、ITガバナンスの普及に弾みをつける」と語る。

 ITGI Japanの母体にあたる米ITGIは、情報システムの監査にかかわる非営利団体「ISACA」から独立する形で1998年に設立された。米ISACAはITガバナンスのフレームワーク(評価基準の体系)「COBIT(Control Objectives for Information and related Technology )」や、財務報告にかかる内部統制の視点でCOBITの内容を抽出・整理し、米SOX法(企業改革法)対応で必要なIT統制の目標を明確にした「COBIT for SOX」などを作成している。

 米ITGIの役割は、COBITやCOBIT for SOXの作成といった米ISACAの活動を支援すること。ITGI Japanも同様に、日本のISACAを支援する形で、ITガバナンスの普及を進めていく。日本でISACAは、東京支部、名古屋支部、大阪支部の3団体に分かれて活動している。

 ITGI Japanの発足にあたり、ISACA東京支部はすでに準備会を設置。ITGI Japanの初代会長として、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科特任教授/みすず監査法人の松尾明氏が就任する予定。11月18日に開催する設立記念カンファレンスでは、COBITやCOBIT for SOXの作成にかかわった米ITGIのボードメンバーなどが講演する。

 梶本理事は、「ITガバナンスとは、企業戦略に貢献するシステムのあり方を考え実行すること。いわゆる日本版SOX法の登場を契機に、日本でもこの言葉が注目されるようになってきた。この考え方を日本で根付かせていき、ゆくゆくはITガバナンスの先進国としてアピールできるようにしたい」と話す。

 これまで米ISACAが作成した文書は、ISACA東京支部のメンバーが中心になって日本語化の作業を担当していた。ISACAは主にCISA(公認情報システム監査人)の資格を持つ監査人を中心とした非営利団体で会費制によって運営されており、日本語化などにかかる作業費用は会費で賄っている。ITガバナンスの普及には、「資金を集め、日本語化や日本の商習慣に合わせた日本化を支援する体制が不可欠」(ISACA東京支部の原田要之助 元会長)との声がISACA内部から上がったことが、ITGI Japan設立のきっかけになった。

 ISACA 東京支部は現在、COBITの最新版である「COBIT version 4」や、米ISACAが実施した、企業情報システムのROI(投資対効果)にかかわる調査などの日本語化にとりかかっている。なお、COBITの前版「COBIT version3」は五つの文書で構成されており、このうち実務上の指針にあたる「マネジメントガイドライン」は、ISACA東京支部のWebサイトから無償で入手できる。