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「Googleの強大化」は我々に何をもたらす?――NTTがシンポジウムを開催

八木 玲子=日経パソコン 2006/09/25 日経パソコン
ICTが生み出した数々の「症候群」。NTTの外村氏が問題提起として提示した
ICTが生み出した数々の「症候群」。NTTの外村氏が問題提起として提示した
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左から外村氏(NTT)、竹内氏(東京大学)、東氏(哲学者)、石黒氏(大阪大学)、前田氏(NTT)
左から外村氏(NTT)、竹内氏(東京大学)、東氏(哲学者)、石黒氏(大阪大学)、前田氏(NTT)
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東氏が指摘する、環境管理型社会の問題点
東氏が指摘する、環境管理型社会の問題点
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石黒氏が開発するアンドロイド。左端は、石黒氏本人(左)、アンドロイド(右)が並んだ写真
石黒氏が開発するアンドロイド。左端は、石黒氏本人(左)、アンドロイド(右)が並んだ写真
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 「Googleのような検索エンジンの強大化は、我々に何をもたらすか」「人間そっくりのヒューマノイドロボットが目指すものは」「人の心情を察することのできるITとはどんなものか」――。2006年9月22日、これからのコンピューターと人間のあり方を考えるシンポジウムが、東京・原宿で開催された。NTTコミュニケーション科学基礎研究所が主催した「環境知能シンポジウム」だ。気鋭の学者/研究者がパネリストとして参加し、刺激に富んだ議論が展開された。

 まずは、同研究所の外村佳伸所長が登壇、シンポジウムのタイトルである「環境知能」について語った。「これまでの情報通信技術(ICT)は、便利、快適などの軸で進化してきた。しかし今、これを疑い、別の軸を探してみるときが来たのではないか」との問題提起が根本にある。ICTによる弊害として、漢字を読めても書けない「変換退行症候群」、よく知らないことでもインターネットで検索すれば分かった気になる「知ってるつもり症候群」、いかなる時もメールへの返信に追われる「24時間症候群」などを列挙。ICTを人間にとってよりよいものにしていくには、大きな視野で物事を考えていかなければならず、そこで重要になるのが「環境知能」だという。ICTを含め、自然や人工物、さらに人間の心の中までを「環境」としてとらえ、大切なことを見極めながら方向性を見いだしていくことを意味している。

 続いて、パネリスト4人が登壇した。東京大学大学院の竹内郁雄教授、哲学者/批評家の東浩紀氏、大阪大学大学院の石黒浩教授、そしてNTTコミュニケーション科学基礎研究所の前田英作主幹研究員である。それぞれの専門分野から、「環境知能」というテーマにかかわる考察が披露された。映像での出演だが、カリフォルニア工科大学の下條信輔教授も登場した。話題は多岐にわたったが、その中から「環境管理」と「ロボットと環境」という2つの話題を紹介しよう。

ICTにコントロールされることの危険

 「環境管理」という概念を持ちだしたのは、哲学者の東氏。環境管理とは、「人間を信用しないで、社会秩序を維持しようとする方法」(東氏)で、具体的にはICTを含めた環境側が人間をコントロールすることを指す。実社会を見てみると分かりやすい。20世紀の前半までは、人間に規律や訓練を課すことで、社会秩序を維持しようとしてきた。しかしそれだけでは必ずしも十分ではなく、統一的な価値観で人間をまとめることの危険性も認識されてきた。

 20世紀後半からは、人間の多様性を許容し、価値観を押しつけない社会へと変わってきた。同時に、人間の自由な意志に期待せず、環境側を変えていくことで社会を維持していくという、環境管理型の考え方が生まれてきた。例えば「飲酒運転をさせない」という目的を達成するために、従来の「酒を飲んだら運転しない」という規律だけでは十分ではなく、環境管理型社会に移行しつつある今は「呼気のアルコール濃度が高いと発進させない車を作る」という策が採られるようになってきている。

 東氏によれば、インターネットの歩みもこれと同じ進み方をしているという。例えばGoogleは、個人の自由を尊重し、自分が好きなときに好きな情報にアクセスできるようにしている。SNS(ソーシャル・ネットワーク・サイト)では、自分が好きな人とだけつながることができる。つまり「多様な人間を共生させつつ、彼らがぶつかり合わないように情報環境側が調整している」(東氏)。

 システムによる環境管理は便利である一方で、ICT側に人間がコントロールされつつあることにほかならない。人間にどのような情報を与えるか、どのように他人とコミュニケーションさせるかをシステム側が制御できるからだ。「『Web進化論』は優れた本だが、あれを読んで、Googleの強大化に恐れを抱いた人は少なくないのではないか。この恐れは、まさに環境管理に対する恐れだ」(東氏)。

 環境管理型社会が進むと、人間の「自由意志」の存在自体もあやふやになってくる。東氏が引き合いに出したのは、米アマゾン・ドット・コムの「おすすめ」システム。「アマゾンにログインすると、あなたはこの本が欲しいのではないですか?と推薦される。ここでお薦めされたものを買うのは、果たしてその人の自由意志と言えるのか。これが今後、リアルな問題となってくるだろう。例えば選挙で誰かを選ぶ場合などはいい例だ」(東氏)。さらに、人間の自由意志の存在があやふやな状態では責任の所在も不明確になり、何か問題が起こったときに誰が責任を取ればよいかが分からなくなるとの危険性も指摘した。

アンドロイドで人間の存在感は伝わる

 ロボットと環境、という側面でプレゼンテーションを披露したのは、大阪大学の石黒氏(研究室のWebサイト)。知能ロボットを専門とする石黒氏は「人とかかわるロボットを作ろうとしたとき、自分たちを取り囲んでいる環境から得られる情報は不可欠」だと言う。例えばロボットが人間を認識する場合には、ロボット自身が持っているカメラやセンサーだけでは物足りない。椅子や机、床や天井など環境が持つセンサーをフル活用して人間の動きを把握する必要がある。つまりこれからは「センサーネットワークと連動した環境一体型ロボットがロボットの標準的形態になる」(石黒氏)。

 ロボットが人間とスムーズにコミュニケーションするために、ロボットの見かけも発展させるべきだという。「今のところロボット開発技術はロボットの動きに費やされているが、見かけも同じくらい重要」(石黒氏)。石黒氏は人間そっくりの見かけを持つロボットの開発に取り組み、自分のアンドロイドも作り出した。

 現在は、このアンドロイドを使ってさまざまな実験を実施中。例えば被験者とアンドロイドとで、会議をさせる実験。アンドロイドは、別室に入った石黒氏自身が遠隔操作する。石黒氏の発話や仕草などを、そのままアンドロイドが再現する仕組みだ。実験開始直後は、被験者はアンドロイドの目の動きの不自然さなどが気になり、違和感を覚えるという。しかししばらくして議論が盛り上がってくると、被験者はアンドロイドの目を見て話すようになるという。「想像以上に、アンドロイドで人間らしさを伝えられる。人間の存在感の7~8割は、アンドロイドで伝えられるのではないかという気もしている」(石黒氏)。遠隔操作をしている石黒氏自身も、アンドロイドが自分の分身であるかのような気がしてくるという。離れた場所にあるアンドロイドに誰かが触れると「不思議なことに、自分が触れられたような感覚がする」(石黒氏)。

 これ以外にも、東京大学の竹内氏は、情報爆発時代において、情報を編集するという作業が重要になるであろうことを指摘した。NTTの前田氏は、人間をホッとさせ、温かい気持ちにさせるシステムとして「まっしゅるーむ」という名のプロジェクトを紹介した(詳細はこちら)。パネリスト同士が意見を交わしたり、会場からも質問が飛ぶなど、活発な議論が繰り広げられた。シンポジウムの模様を収めた映像は、後日インターネット上で公開される予定だ。

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