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【東京ゲームショウ2006】今回の「次世代機W杯」開催地は北米,日本メーカーはAwayで勝てるか?---現役プロデューサがディスカッション

中田 敦=ITpro 2006/09/22 ITpro

 9月22日に開催された「東京ゲームショウ・フォーラム」で,ゲーム・メーカーの現役プロデューサや映画監督らが,日本のゲーム業界を取り巻く問題点を語るパネルディスカッションが開催された。カプコン開発統括編成部の竹内潤部長は「間近に迫る次世代ゲーム機競争は,いわばゲーム業界のW杯。これまでの開催地は日本だったが,今回は北米だ。日本メーカーはAwayで勝利できるだろうか」と問題を提起した。

 セッションには,カプコンの竹内氏,バンダイナムコゲームスコンテンツ制作本部Bプロダクション第三チームの稲垣浩文チーフプロデューサー,映画「ALWAYS三丁目の夕日」やゲーム「鬼武者3」のオープニング・ムービーの監督であり,VFX(Visual Effects)の日本における第一人者である白組の山崎貴監督が参加した。

伸びる北米・欧州,足踏みする日本


写真1●カプコン開発統括編成部の竹内潤部長
 最初にプレゼンテーションを行ったカプコンの竹内潤氏(写真1)は,ゲーム市場の主戦場が日本から北米と欧州に移っている現状に,日本メーカーがあまりに鈍感であることを指摘した。米Microsoftの「Xbox 360」,ソニーの「プレイステーション3」,任天堂の「Wii」が出揃うことで,いよいよ「次世代ゲーム機競争」が本格化する。「次世代機競争は,5~7年に一度だけあるワールド・カップみたいなもの。開催地はいままで日本だったが,今回の開催地は北米だ」と指摘する。

 北米が開催地となる理由は2つある。1つはゲーム開発技術の進化が,北米で生じていることだ。「現在のゲーム開発技術は,パソコン・ベースの技術を核に進歩しているのが実情。(先端的な)パソコン・ゲームの市場が存在しない日本は,この分野で遅れている」(竹内氏)。竹内氏は「物理演算や映像処理のミドルウエア,開発ツールのほとんどがアメリカ製であることが,ゲームの主戦場が北米であることを証明している。既に,海外製品抜きでは日本のゲームを開発できない」と強調する。

 もう1つの理由が,市場規模だ。北米市場や欧州市場は,現在も順調に伸びている。その一方で日本市場は足踏み状態が続いており,市場規模で見ると,北米の約3分の1,欧州の2分の1にとどまっている。「任天堂の『DS』でライト・ユーザーが流入したから日本市場は縮小していない,といった主張を聞くことがある。サード・パーティの現状を見ていない主張だ。DS用ゲームは,ファースト・パーティである任天堂のタイトルしか売れていない。100万本出たサード・パーティ製DS用ゲームは『たまごっち』だけ。DSでサード・パーティのヒットは出ていない」(竹内氏)。

 またDSが獲得したライト・ユーザーが,今後もゲーム市場に留まり続けるかどうかも,疑問だという。竹内氏は「脳トレ」亜流のタイトルを乱発するゲーム・メーカーに警告を発している。「脳トレ系のゲームは確かに開発コストは低い。しかし,亜流で収益を得るようになると,大きな投資に対する心理が後退する」と語る。特に,下請けとして亜流ゲームを作るメーカーほど,悪影響をこうむると指摘する。「『また同じのをもう1本作ってくれ』と言われたとき,開発コストは確実に削減される」という。

北米で下がり続けている日本メーカーの存在感

 これから北米で「Awayゲーム」を戦わなければならない日本メーカーだが,残念ながら北米市場における日本メーカーの存在感は低下する一方だ。「北米市場で販売されている日本開発ゲーム・タイトルの本数は,2001年が74本だったのに対して,2005年は194本と増えている。しかし日本開発タイトルの北米市場での販売本数シェアは,2001年の40%台が2005年は20%台前半にまで低下した。日本開発タイトルの海外での販売実績は,芳しくない」(竹内氏)。

 竹内氏は日本メーカーと海外メーカーの違いをこう語る。「日本を学んできた海外,世界に頼ってきた日本」。日本向けタイトルが海外でも好調に売れる一方で,海外ゲームのことを「洋ゲーは日本で売れない」と侮ってきた日本メーカーが,海外メーカーに逆転されつつあるというのだ。

 「もはや『洋ゲー』は存在しない」---竹内氏はこう語る。「『GTA(Grand Theft Auto)』や『HALO』,『Half Life 2』といった,精密で丁寧な作りの海外製ゲームが,海外市場で300万本以上のヒットを記録している」(竹内氏)。こういった「日本ゲームに学んだ海外ゲーム」が,黒船として日本市場に襲来する日は近いといのが竹内氏の主張だ。

一度失敗したからといって海外を諦めるべからず

 それでは日本メーカーはどうすべきか。「北米市場に対する投資を継続的に行うしかない」というのが竹内氏の主張だ。「日本メーカーは北米市場で失敗すると,すぐに『日本とアメリカではセンスが違うから』などと言い出して,北米から手を引いてしまう。しかし,北米の映画や音楽をこれだけ受け入れている日本人とアメリカ人の間に,センスの違いがあるはずがない。ただの調査不足,調査の怠慢の言い訳に,センスを使っているのではないか」と手厳しい。

 「日本のゲーム市場の縮小は事実。北米メーカーが実力を発揮しきる前に,北米に打って出るべき。それも『日本向けタイトル』『海外向けタイトル』などをいう先入観を持って開発せずに,メーカーはもっと自発的に海外に進出するべきだ」と言う。

アニメ制作から戻ってきたら,ゲーム市場は変わっていた


写真2●バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部Bプロダクション第三チーム稲垣浩文チーフプロデューサー

 続いてプレゼンテーションを行ったのは,バンダイナムコゲームスの稲垣浩文氏(写真2)だ。稲垣氏はバンダイで長らく「ガンダム」をテーマにしたゲームの開発を手がけていた。2003年以降は,アニメ制作などを手がけるプロジェクト・チームに移り,アニメ「エウレカセブン」の制作などに関わった。現在は再度ゲーム部門に戻り,プレイステーション3と同時に発売される「機動戦士ガンダム Target in Sight」のプロデューサを務めている。

 バンダイ,バンダイビジュアル,米Bandai Entertainment,ボンズ,博報堂DYメディアパートナーズ,毎日放送が出資して制作したエウレカセブンは,「日本国内では2006年7月で出資金分が戻ってきた。2006年4月からは北米での放映が始まった。今後,欧州,アジアなどでの展開を開始したら,それはすべて利益になる。非常に優秀なコンテンツだった」と振り返る。

 稲垣氏は,自身が経験したゲーム制作とアニメ制作の違いを3点指摘した。

 第1点は,ゲームの商品寿命が圧倒的に短いことだ。「50話放映のアニメなら,マーチャンダイジング(商品化)は1年間続けられるし,日本で放映が終わっても海外展開できるし,ネットでの配信も見込める。一方,ゲームの開発には2~3年かかるのに,発売の半年前に告知を始めて,2カ月前に受注を始めて,発売2週間後にはもうリピート注文が来なくなったりする」と語る。ゲームの商品寿命は実質2週間だというのだ。

 第2点がゲームの開発費高騰だ。「PS3のガンダムは,かなりの金額がかかっている。PS2用タイトルの2倍以上。これをどうやって回収するかが,最大のテーマだ」。

 第3点は,既存ユーザーの減少。「2年半ぶりにゲームの現場に戻ってきて,こんなに減ってるの,と驚いた」と語る。

 稲垣氏によれば,バンダイナムコゲームスは現在,ゲーム・タイトルを3つの市場に分類している。1つは「ハイエンド」で,PS3やXbox 360用タイトルを指す。その下が「ミドル」で,PS2,PSP,Wii用タイトルが該当する。DS用タイトルは「ライト」に分類している。

 稲垣氏は「ハイエンド向けタイトルの開発には,10億円以上かかる。この開発費は,今後も1社だけで負担していくべきなのだろうか。アニメ制作のように製作委員会の仕組みを採用し,音楽会社やアニメ会社にも出資してもらって制作し,ゲーム・コンテンツを基に商品化を図って,ゲーム以外の収入を得ていくべきだろう」と提言している。

「PS3の値下げには驚いた。来週の休暇がなくなる…」


写真3●左からカプコンの竹内氏,バンダイナムコゲームスの稲垣氏,白組の山崎貴監督

 パネルディスカッションは,竹内氏と稲垣氏に白組の山崎貴監督を加えて実施された(写真3)。司会は「日経エンタテインメント!」の渡辺一正副編集長。

 まずは,9月22日に発表されたPS3の値下げに関する感想が述べられた。値下げを歓迎する声がほとんどだが,ゲーム・メーカーとしては戦略変更も必要になるため「これで来週の休暇がなくなる」との声も聞かれた。

 次世代ゲーム機の登場によって,ゲーム開発はどう変わるだろうか。カプコンの竹内氏は「当社は大阪の会社であり,職人気質の開発者が多い。新しいハードウエアで何ができるか考えるというよりは,開発者の持つ『ずっと作りたいゲーム』が新しいハードウエアで実現できるか,という視点で見ている」と語る。次世代機で実現するゲームという概念は特にないという考え方だ。

 ただし「ムービーを使わなくてよくなった」と竹内氏。PS3やXbox 360では,これまでムービーを作っていたシーンも,すべてリアルタイム・レンダリングで表現できるようになったという。

 「ムービーを使わなくてもいい」という発言に敏感だったのは,白組監督の山崎氏だ。ゲームのムービー作成をかなり請け負っていたからだ。それに対して竹内氏は「リアルタイムでキャラクターを動かすとしても,演出やカメラ・アングルの工夫が必要であるという点は変わらない。監督がいないと,作りきれない」と応えた。

 バンダイの稲垣氏は「次世代機向けゲームは,まずはガンダムやドラゴンボールから始めていく」と語る。その真意は「たまごっちをPS3で展開するのは当面無理」という意味だ。初期のPS3ユーザーは,ヘビー・ユーザーが中心だ。ライト・ユーザー向けのゲームを初期に投入しても意味がない。「バンダイでは,PS2への代替わりの時期にも,PS1向けゲームを積極的に売っていた」と語る。ハードウエアのユーザー層に合わせて,商品開発をするという。

CG作成スキルが「クリア」される次世代機

 次世代機向けゲーム開発で大きな問題になっているのが,CG作成のノウハウが一度クリアされてしまうことだという。「PS2までは,少ないポリゴン数で格好良いCGを作るスキルが求められていた。ところがPS3では2万ポリゴンが同時に使用できる。PS2時代に(ポリゴン数の多い)CGムービーを作っていたグラフィッカが,モデル(キャラクタ)や背景のCGを作っているのが現状」(バンダイの稲垣氏)だという。

 事情はカプコンでも同じで,「新しい環境で,なかなか質の高いCGが作成できなかった。そこで,実際に模型を作って,それをベースにCGを作り,ライティングなども模型を参考にした。次世代機でのやり方をつかむまでに1年かかった」(竹内氏)という。こういったスキルの断絶も,開発コスト上げる要因になる。

 白組監督の山崎氏は,映画「ALWAYS三丁目の夕日」のような実写とCGを組み合わせた作品でも,実写を基準にしつつCGを作成したと語る。「実写を基準値にするのは分かりやすいやり方。ダメ出しするのも『実写になじんでいない』と言えばいいので分かりやすい」と語る。

じっくり作るべきなのは「シナリオ」

 次世代機になっても変わらない基本もあるようだ。それは「シナリオ」の重要性だ。バンダイの稲垣氏は「商業的に成功したアニメ,エウレカセブンも,シナリオには非常に時間をかけていた。毎週4~5人が集まって,長い時間をかけてディスカッションしていた」と語る。ゲームでも重要なのがシナリオだというのが三氏の認識だ。

 残念なことに「シナリオを練る『過程』にお金をかけたがらないのが日本企業」(山崎氏)という現状もある。カプコンの竹内氏は「シナリオを練る過程に,どれだけ人とお金をつぎ込めるかが勝敗の分かれ目になる。そこに気付いたゲーム会社だけが,今後も生き残れるだろう」と述べている。

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