写真●CESAの和田洋一社長

図1●主要コンテンツ産業の市場規模。ゲームは音楽CDを上回る
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図2●ゲームの市場規模推移
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図3●ゲームをプレイしたいという意向を示している人の分布。すでにゲームをプレイしている層(薄いオレンジ)を含めると,50代でも3割近くになる
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 「ゲーム産業は問題の設定を変えるべきだ」と訴えるのは,コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の和田洋一会長(スクウェア・エニックス社長)だ(写真)。9月22日から開催の東京ゲームショウで,和田会長はゲーム産業の方向性を指し示した。

 各種の調査によると,ゲームの市場規模は3.1兆円。音楽CDの売り上げ規模である2.8兆円を超える(図1)。「つまり,すでにゲームはエンタテインメントの中核としての位置を獲得した」(和田会長)といって良いだろう。

 一時はゲーム産業に停滞感や飽和感が指摘されていたが,年平均9.3%の成長を続けているという。これにオンライン・ゲームを加えると11.8%の成長率だ(図2)。

 「ゲームをプレイしている人が依然として増えている。また,これからゲームをやってみたい,という層を見ると,50代などシニア層にも広がっている。これはゲーム業界にとって非常に大きなチャンス」と,和田会長は“量の充実ぶり”強調する(図3)。

 そうした量的な広がりを指摘する一方で,和田会長はゲーム産業に向けて「質の転換が遅れていることに危機意識を持つべき」と注意を促す。

 和田会長は,ゲームはこれまで画像や音声が充実している“リッチ”なコンテンツを目指して進化してきたと見る。「今後も必要な方向性」であると和田会長は前置きしたうえで,今後は「ユーザー層や生活シーン,携帯電話など端末の広がりに合わせて,さまざまなゲームのあり方を提案するべきだ」と述べる。

 そうした多様なゲームのあり方を支えるのは,ゲームの提供者側に求められる「豊かなサービス・マインドや多様なビジネスモデル」(和田会長)である。「“作品づくり”を指向してきたプロダクトアウト的な発想だけでは,広がるゲーム市場はカバーできない」とも和田会長は指摘する。

 和田会長はここ最近,「ゲーム産業は第2ステージへ」というキーワードを繰り返し提示しているが,今回の講演でも改めて提示した。「多様化への対応力を付けることこそが,第2ステージに入ったゲーム産業の課題」(和田会長)。

 アイデアの一つとして,いわゆる「Web2.0」的なゲーム開発のアプローチがあり得るとも提案する。和田会長は「たくさんのプレイヤーがゲームに介在することで,例えばキャラクタの動きをプログラミングする必要がなくなるなど,コンテンツ・デザインの手法が変わってくるかもしれない。ブログなど,コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア(CGM)の考え方がゲームに入っても良いのでは」と話す。

 「問題や課題はありつつも,ゲーム産業はこれまでも数々のイノベーションを果たしてきた。20年で3兆円規模にも上り詰めたゲーム産業に,さらに脱皮できるチャンスがやってきた」と和田会長はゲーム産業にエールを送った。