マイクロソフト システムプラットフォームグループ テクノロジースペシャリストの今田 隆秀氏
マイクロソフト システムプラットフォームグループ テクノロジースペシャリストの今田 隆秀氏
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 マイクロソフトは先日,「Virtual Server 2005 R2」を無償化した。無償化のインパクトはあまりに大きいのでそれだけに目が行きがちだが,同製品の良いところはそれだけではない。9月21日に開催された「ITproフォーラム 仮想化の全てがわかる一日」で,マイクロソフト システムプラットフォームグループ テクノロジースペシャリストの今田 隆秀氏が,Virtual Server 2005 R2の特長と,Windows Serverにおける仮想化技術のロードマップを解説した。

 今田氏が最初に指摘したポイントは「Virtual Server 2005 R2の仮想マシン上では,OSとハードウエアの互換性に関する問題が全く生じないこと」だ。Virtual Server 2005 R2の仮想マシンが提供する仮想デバイスは,Windows NT 4.0,Windows 2000,Windows Server 2003の標準ドライバで動作するものだけである。

 第2点は,仮想ハードディスクを採用した点だ。仮想マシンをセットアップすると,仮想マシンごとに独立したフォルダが作られ,仮想マシンのデータがすべてそこに格納される。このフォルダに入っているのは,仮想ハードディスク・ファイル1個と,XML形式の構成データだけである。仮想マシンを別の物理サーバーに移行するのに必要な作業は,ファイルのコピーだけだ。また仮想マシンの設定もXMLファイルを編集するだけなので容易だ。

 またVirtual Server 2005 R2は,前バージョンの「Virtual Server 2005」と比較して「2倍程度パフォーマンスが向上している」(今田氏)。加えてR2から,ホスト環境として64ビット・プロセッサ(x64)にも対応した。「64ビット環境でVirtual Server 2005 R2を検証したところ,同じハードウエア構成の32ビット環境に比べて18%のパフォーマンス向上が実証された」(今田氏)という。

Windows Server 2003 Enterprise Editionとの相性は抜群

 Windows NT 4.0などの既存のサーバーを仮想マシンに移行させるのも容易だ。Windows Server 2003 Enterprise Editionであれば,物理サーバーのディスクの内容を丸ごと仮想マシンにコピーする「Automatic Deployment Services(ADS)」と「Virtual Server 2005 移行ツールキット(VSMT)」というツールを無償で利用できるからだ。

 Virtual Server 2005 R2は,リモートから仮想マシンを制御するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)も備えている。今田氏は「TechNetで無償公開しているスクリプトを使って,仮想マシンのプロセッサ利用率を動的に変更するといったことが可能になる。このスクリプトはたった4行だ」とアピールしている。

2007年上半期に「Virtual Server 2005 R2 SP1」

 マイクロソフトは2007年上半期に「Virtual Server 2005 R2 Service Pack 1」を提供する予定だ。SP1では,「AMD Virtualization(AMD-V)」や「Intel Virtualization Technology(VT)」といったハードウエアによる仮想化支援機能がサポートされるので,パフォーマンスや安定性が向上するという。

 またWindows Serverの「Volume Shadow Copy Services(VSS)」に対応するのも大きなポイントだ。「VSSに対応することで,ゲストOSの仮想ハードディスク・ファイルを,ゲストOSの実行中にバックアップできるようになる」(今田氏)という。またオフラインで(仮想マシンを稼働せずに)仮想ハードディスク・ファイルをマウントして,仮想ハードディスクの中のファイルを取り出せるようにもなる。ゲストOSとしてWindows Vistaに対応するのも,SP1になる。

 2008年後半にリリースされる「Windows Server “Longhorn”」(開発コード名)では,仮想化機能「Windows Server Virtualization」が標準で利用できるようになる。Windows Server VirtualizationはLonghorn Serverの出荷から半年以内にリリースされる予定なので,実際に使えるようになるのは2009年前半になる。

 Windows Server Virtualizationでは,ハイパーバイザ型のアーキテクチャが採用されるほか,64ビットのゲストOSや8プロセッサまでの仮想マシンのマルチプロセッサ構成に対応するため,パフォーマンスの向上がさらに見込まれるという。「Windows Server Virtualizationでも,現在の仮想ハードディスク形式がそのまま利用できる。今からVirtual Serverを利用してほしい」(今田氏)とアピールした。