![]() マルチ決済システムの端末(イメージ) [画像のクリックで拡大表示] |
ららぽーと(千葉県船橋市)は、9月28日に開業する「ラゾーナ川崎プラザ」(川崎市)や10月4日に開業する「アーバンドック ららぽーと豊洲」(東京・江東)など、同社が運営する4つの大型商業施設で、1台の端末で様々な決済サービスが使える「マルチ決済システム」を採用すると発表した。
川崎市や江東区などの施設では、開業当初はJR東日本が運営する「Suica電子マネー」のみが使える予定。マルチ決済システムは2007年3月以降に順次導入。新システムではSuicaに加え、首都圏の私鉄が運営する電子マネー「PASMO」、NTTドコモのクレジットサービス「iD」が使えるようになる。さらに、ほかの非接触IC技術を使った決済サービスの提供者にも参加を呼びかけていく。
JR東日本、NTTドコモ、NTTデータの3社が出資する「Suica普及有限責任事業組合(LLP)」が、ららぽーとに対してシステム費用の一部を資金提供する。同LLPによる資金提供の第1号案件となる。
同LLPは、2005年8月の法施行で認められた新しい組織形態「有限責任事業組合(LLP)制度」に基づいて設立された。Suicaなどの新しい決済システムを導入するには初期投資が必要だが、投資に見合った効果が出るとは限らない。このため、同LLPが資金援助をすることでシステム導入を後押しし、結果として決済の利用拡大を狙っている。
ららぽーとなどの商業施設における決済の利用が多ければ、同LLPは利益を得るが、利用が想定を下回れば、同LLPは損失を被る。ただしLLPの制度上、損失は出資額(各社4億円、合計12億円)の範囲内に限られる。JR東日本IT事業本部ITビジネス部の楠本祐二・電子マネー推進グループリーダーは、「確実に利益を見込める事業ではないため、有限責任のLLPという組織形態を選んだ」と話す。
意思決定が迅速になるのもLLPの特徴。「顧客は、商業施設開業やPOS(販売時点情報管理)システム再構築などの関係で、決定を急いでいるケースが多く、我々もそれに合わせて料金提示などをする必要がある」(楠本リーダー)。株式会社なら取締役会を開くなど時間がかかる決定も、LLPなら迅速にできるという。
現在小売業など数十社に営業活動を展開しており、今後もLLPの支援による決済システム導入が増える見込み。新しい電子マネー・クレジット決済サービスが乱立しているため、「1台の決済端末を置けば済むようにしたいという小売業などの要望は強い」(楠本リーダー)。JR東日本、NTTドコモ、NTTデータの3社連合は、端末共通化の動きにも影響を与えそうだ。