ニトリの東京本部も入居する「赤羽店」
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 家具販売大手のニトリがインターネット販売の拡大を模索している。前期(2006年2月期)、ネット通販の年間売上高は約3億5000万円だったが、今期は倍増の約7億円まで拡大しそうな勢いである。

 これまでニトリは「広告宣伝部」がネット通販も担当してきたが、来期以降はサービスの充実を図るため、新たに「通販事業部(仮称)」を設置して、ネット通販の専門部隊を組織する方向で検討を進めている。同時に、来年5月以降には新たにネット通販の自社サイトを立ち上げ、付随するシステムや物流体制を抜本的に見直す。早ければ、この年末にもシステム開発に着手する。

 ニトリがネット通販のためにヤフーの電子モールに出店したのはわずか2年前であり、家具の販売会社としてはかなり後発だ。ネット通販の売り上げ規模としてはまだまだ小さい。ただし、社内的にはこの2年間で、同社店舗(ホームファニシング)の一番小さな規模の年間売上高(約6億円)に並ぶところまで成長してきた。

 ニトリは、2011年までに店舗網を現在の136店から300店まで拡大する計画を持っている。店舗網の拡大がニトリの最優先事項であり、ネット通販は店舗の補完的なサービスとしての位置づけが強いが、一方で一部の顧客からはネット通販の要望が強まっている。「ヤフー、そして楽天の電子モールにも出店してから、店頭でお客様とネット通販の話になる機会も増えた。今後は店舗網の拡大と同時並行で、ネット通販を充実させなければならない」(高橋邦彦・広告宣伝部マネジャー)。

 現時点では、ニトリのネット通販に課題が多いのは確かだ。広告宣伝部が片手間で運営していては成長に限界があるし、品数も店舗が常時8000~9000点なのに対し、ネット通販はその3分の1以下の2500~3000点にとどまる。価格も原則として店舗と同じだ。

 おまけに通販サービスでありながら、ニトリは完成家具の配送地域を限定している。配送コストを考えて、現在は自社の物流網がカバーできている範囲内でしかネット通販の配送を受け付けていない。もともと低価格販売をセールスポイントにするニトリにとって、通常以上の配送コストがかかる注文は利益を確保しにくい事情がある。

 これらの改善点を考慮に入れながら、来期以降に自社の販売サイトを立ち上げる。全店の売上高が1500億円を超えるニトリほどの規模の企業が自社サイトでネット通販を始めるのは、ネット通販が一般化した現在ではむしろ自然な流れだろう。これまでのように、ヤフーや楽天に手数料を支払ってモールに「間借り」しながら、広告宣伝部がネット通販を運営していたこと自体、ある意味では驚きである。ネット上でも品ぞろえや配送サービスを充実できれば、もともと低価格が武器なだけに、後発でもネット通販で成長できる余地はある。

 家具業界の競合は世界最大級のイケアが日本に進出してきたため、一層激しさを増している。ニトリも「我々の目標であり、何度も海外店を視察して回った経営の『先生』であるイケアと戦うことになった。生徒が先生に挑むようなものだ」(高橋マネジャー)と警戒心を隠さない。9月15日にオープンしたイケアの国内2号店である港北店にも早速視察に訪れ、1号店の船橋店との客層の違いや顧客が利用する交通手段、購入した商品の配送サービスなどを確認してきたという。ニトリはネット通販を含め、300店体制と並ぶ“次の手”を模索している。