カブドットコム証券の齋藤正勝社長
カブドットコム証券の齋藤正勝社長
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 カブドットコム証券の齋藤正勝社長(写真)は9月15日夜、会見を開き、同日開始した私設取引システム(PTS)による株式の夜間売買が「システム障害などの問題もなく、一日目の取引を無事に終えた」と発表した。注文件数は同社の昼間の取引の約9%にあたる約5000件。約定件数は同 約3%、約定金額は同 約2%にとどまり、売買代金は1億6800万円だった。

 同社はPTSによる夜間売買の目標を、昼間の取引の約20%においている。初日は、それを大きく下回る結果だったことに対して齋藤社長は、「3連休の前で商いが膨らみにくい状況だったから」と説明した。もちろん、そのような状況であることは事前に分かっていたが、「システム障害などの問題があっても、3連休があれば何とか対処できることから、15日のPTS開始を決断した」(齋藤社長)。

 PTS(Proprietary Trading System)は、証券会社自身が電子的な株取引の場を提供し、証券取引所の時間外でも株式売買などができるようにするもの。従来から証券会社が提供する夜間取引システムはあったが、取引価格がその日の終値に固定されるなど一定価格でしか売買できなかったこともあって、あまり普及していない。

 これに対してカブドットコム証券のPTSは、同証券に口座を持つ投資家同士がオークション方式で株式を売買する。需給関係によって価格が変動するオークション方式を採用したPTSは国内初のため、注目が集まっている。取引の対象は、東京証券取引所などに上場する300銘柄で、当初は現物取引のみを扱う予定。取引時間は19時半から23時である。

 カブドットコム証券はPTS開設に当たり、PTS用パッケージ「ITMonster」をベースに、注文のマッチングや時価の提示、情報配信などを実施するシステムを開発した。OSは、WindowsとLinux。ITMonsterの開発元は、証券業向けのシステム開発などを手掛けるインタートレードである。

 システムの設置場所は、カブドットコム証券の福岡システムセンター内。今年4月に同センター内に開設した勘定系データベース・システムなどの災害復旧用BCPシステムと、一部ハードを共有化させることなどで、「計算の仕方にもよるが、17億円程度にシステム投資を抑えることができた」(雨宮猛常務執行役)という。

 カブドットコム証券は、多くのネット証券とは異なり、システムをアウトソーシングせず自社開発する。PTSについては、「カブドットコム証券のすべての取引の数%を超える取引量があればペイする設計にした」(雨宮常務執行役)といい、斎藤社長は「自前でシステムを開発したからこそ、損益分岐点を低く抑えられている」と語った。