総務省は早ければ10月にも,「インターネットただ乗り問題」などにメスを入れるべく,調査研究会を立ち上げる方針を明らかにした。

 インターネットただ乗り論とは,インターネット上でコンテンツ配信などを手掛ける事業者も,インフラの維持費などを負担するべきという考え方。動画配信などを提供するサービス事業者に追加料金を課す,利用量の多いユーザーの通信料を値上げする--などの方策が考えられる。

 これは,P2Pファイル交換ソフトや動画配信の普及に伴い,通信トラフィックが増加したことで浮上してきた問題である。通信事業者やプロバイダは,トラフィックの増大で通信設備の増強を求められている。多くのプロバイダは定額制でサービスを提供しているため,支出が増加しているにもかかわらず,収入が増えにくい状況。一部のプロバイダは,このままではネットワークを維持できないとの悲鳴を上げている。

 総務省が立ち上げる調査研究会では,インターネットのインフラを構築・維持する通信事業者やプロバイダと,その上でサービスを提供するコンテンツ事業者やサービス事業者の間での適正なコスト負担について議論する見込み。ただし,調査研究会のメンバーは現時点では未定。「関係者や学識経験者などバランスを取って声を掛けていくつもりだ」(総務省)とした。

 調査研究会では,コスト負担だけでなくインタフェースの中立性に関する問題も議論する。インタフェースの中立性とは,通信事業者がコンテンツ事業者や端末メーカーに対して,公平にサービスや技術情報を提供すべきという考え方。研究会では,通信事業者自身がコンテンツ事業に乗り出す場合,コンテンツ事業者のサービスと自社のサービスを区別して取り扱うことの是非などを議論する見通しだ。

 インターネットだけでなく,携帯電話のブラウザフォン・サービス,次世代ネットワーク(NGN)なども議論の対象にする。「議論が進むと対象を絞る可能性はあるが,現時点ではIPネットワーク全般を広く取り扱う方針としている」(総務省)。

 なおこの調査研究会は,9月13日に公開された「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」の最終報告を受けて設置を決めた。総務省はこの最終報告を受けて,「新競争促進プログラム2010」という競争ルールを打ち出す。同プログラムは多岐にわたる論点を含んでおり,ほかにも多くの調査研究会が設置される見通しだ。