マイクロソフトWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長
マイクロソフトWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長
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 マイクロソフトは2006年9月、Windows VistaのRC(リリース候補版)1を登録メンバーに公開した。2006年11月の企業への提供開始、2007年1月の一般発売に向けて、開発作業はいよいよ最終局面を迎えている。現在の開発状況や販売戦略、ユーザーにとってのメリットなどについて、マイクロソフト日本法人でWindows本部の本部長を務めるジェイ・ジェイミソン氏に聞いた。

■RC1が登場したことで、2007年1月の一般向け発売は確実だと思ってよいか。

 現在のところ、2007年1月の発売に向けて作業はスケジュール通りに、順調に進んでいる。RC1も予定通りに完成させることができた。

 ただ、最も重要なのは品質だ。これから最終リリースまで、基準以上の品質を確保し続けられるか、気を抜かずに見守っていく必要がある。

■2006年の年末商戦に間に合わなかったことは、売れ行きに影響するか。

 発売時期に関しては、さまざまな観点から考慮した。Windows Vista単体だけでなく、業界全体のことも考えてスケジュールを決めた。

 ここでもやはり、カギを握るのは品質だと考えている。高品質な製品さえ提供できれば、発売時期の延期は販売には影響しないだろう。

■家庭でパソコンを利用しているユーザーにとって、Vistaを使うメリットは何か。

 多くのユーザーは、既にパソコンやデジタル機器を使って写真や音楽、メールなどを楽しんでいる。だが、今のところまだいくつか課題がある。必要な情報を見つけるのが難しいことや、プライバシーやセキュリティなどの不安に悩まされていることだ。

 こうした現状に対して、Windows Vistaは大きく3つのメリットを提供できる。1つ目は、日々の作業を簡単に、安心して実行できること。Vistaには、そのためのさまざまな機能がある。例えば保護者が子どものパソコン利用を制限できる「保護者による制限」機能や、「Internet Explorer 7」が備えるセキュリティ機能、知らない間にスパイウエアなどをインストールされることを防ぐための機能などだ。

 2つ目は、必要な情報をすぐに見つけ出せること。Vistaには、強力な検索機能が搭載される。メールや音楽、写真などを大量に持っている人でも、キーワードを入力すればすぐに探し出せる。

 そして3つ目は、デジタルメディアを楽しめること。「Windows Media Player 11」や新しいメディアセンター機能など、最新の環境で動画や音楽などを視聴できる。

■Webサイト閲覧やメール程度にしかパソコンを使わないというユーザーも少なからずいる。彼らに対して、Vistaの価値をどのようにアピールしていくか。

 パソコンユーザーの多くは、もっとパソコンを活用したいと考えているはずだ。しかし、現状ではそれがなかなか難しい。Vistaは、それを解決する力を持っている。我々は2種類のマーケティング戦略を通じて、その価値を訴えていきたいと考えている。

 まず、Webサイト閲覧やメールなどにしかパソコンを使っていないユーザーには、強固なセキュリティをアピールしたい。メールやWebサイト閲覧には、常にセキュリティの問題がつきまとう。Vistaを利用すれば、安全なパソコン環境を容易に手に入れることができる。加えて、Windows XPをはるかにしのぐ検索機能も備えている。メールにしかパソコンを利用していないユーザーでも、メールの量が増えて必要な情報がなかなか見つからないという問題を抱えている人は多いはず。彼らには、検索機能の良さを感じてもらえるだろう。

 もう1つの戦略は、Vistaによってパソコンの使い方がいかに広がるかをアピールすることだ。パソコンの力をフル活用することで何ができるかを実際に見てもらえば、Vistaには非常に強力な付加価値がたくさんあることに気づいてもらえるだろう。例えば、ハンディカメラを使って高解像度の映像を撮影した場合。Vistaなら、これを使って自分だけの作品を作ることができる。高品質の作品を自分でも簡単に作れることが分かれば、Vistaの価値を理解してもらえるだろう。

 これはコンシューマだけでなくビジネスユーザーに対しても言えることだが、パソコンは非常に強力な機器なのに、多くのユーザーは残念ながらそのパワーを使い切れていない。Vistaで、パソコンのパワーを使いこなすための手助けをしたい。

■Vistaは、インターネット経由で提供されている「Live」サービスのプラットフォームにもなるとされている。具体的なイメージを聞かせてほしい。

 WindowsとLiveサービスとの関わりについては、長期にわたる戦略を持っている。今は、その最初の時期だと考えている。

 Windows XPでも、「Windows Live Messenger」や「Live Search」など複数のLiveサービスを利用できる。だがVistaやその先の未来を見据えると、オンラインのサービスとOSは統合される方向に進むと考えている。ユーザーは、その2つをシームレスに利用できるようになるだろう。

 現在、オンラインのサービスの多くは、インターネットやブラウザーをベースに作られている。しかし、パソコンとサービスとがもっと密接にかかわることで、もっとさまざまな可能性が生まれる。

 例えばデジタルカメラで撮影した写真を、自分のアドレス帳に登録されている家族だけに公開したい、という場合。現段階では、そんなに簡単にはできない作業だ。OSとLiveサービスとが統合されれば、このようなことも容易になるだろう。音楽や写真をサーバー上にバックアップしておきたいといったニーズに対しても、LiveサービスとOSとが密接に連携することで、今よりも便利な使い方を提供できるようになるはずだ。