損保ジャパンの「ダメージ・プロッティング・システム」の画面。輸送時に損傷が発生した部位を入力・分析できる[画像のクリックで拡大表示]

 損保ジャパンが、情報システムに関する国際特許戦略を強化している。かねて出願していた「ダメージ・プロッティング・システム(DPS)」の特許を米国で6月に、日本で8月に取得した。欧州でも審査が進んでいる。国内の金融機関が国際特許取得に乗り出す取り組みは珍しい。

 損保ジャパンは、ほかにもシステム関連で延べ数十件の特許を出願中。今後も、顧客サービス向上につながる分野を中心に特許の取得を目指すという。特に米国で、特許を巡る紛争が激しさを増しているため、「ビジネスモデル特許」の取得によって、法的紛争を未然に避ける狙いだ。

 DPSを使えば、完成自動車などの貨物を大量輸送する過程で表面損傷などの事故が発生した際に、損傷部位を入力(プロット)することで電子的に管理できる。この情報を基に事故の状況を分析して、原因追及を支援。損傷の未然防止や改善策検討につなげられる。

 損保ジャパンは、保険商品の顧客である自動車メーカーなどに対して、付加的サービスとしてDPSを提供している。特許には「属地主義」という考え方がある。例えば、自動車を日本から米国に輸出する際には、米国でもDPSを使うことになるため、米国で有効な特許を取得しておく必要がある。

 企業サービスセンター部企画グループの中村敬・課長は、「海外の保険会社は日本以上にIT(情報技術)を活用した顧客サービス向上に積極的。特に最近は、事故管理システムの充実を目指す保険会社が多い。(特許取得せずに)手ぶらで海外に出るわけにはいかない」と説明する。DPSは顧客企業が長期にわたって利用するシステムであるため、他社が特許を主張することで突然DPSが使えなくなる事態を避ける必要がある。

 損保ジャパンは、「分析システムそのものは珍しいものではない」(中村課長)という理由から、システム(プログラム)の特許ではなく、「物流分野での先進的・効率的な損傷分析方法」を発明したとして特許を出願・取得した。

 ただし、特許の専門家である弁理士の間でも、ある発明について特許取得が可能かどうかの見解は大きく異なる。今回も、過去に「果実に付いた傷の分析」に関する特許出願などが存在することが分かった。最初に依頼した弁理士は「特許取得は不可能」と判断したため、損保ジャパン側は弁理士を交代させてまで特許取得にこだわった。