写真 Network Summit 2006で基調講演を行う総務省の有冨寛一郎・総務審議官
写真 Network Summit 2006で基調講演を行う総務省の有冨寛一郎・総務審議官
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 総務省の有冨寛一郎・総務審議官は9月12日,東京都内で開催された「Network Summit 2006」で,「21世紀のユビキタスネットワーク社会実現に向けて」と題した基調講演を行った。その中で有冨審議官は,“ユビキタス・エコノミー”の実現に向けて,電話の時代とは異なるIP時代にふさわしい競争政策が必要だと強調した。

 有冨審議官はまず,日本の情報通信の現況について分析。インフラ面は,これまで進めてきた「e-Japan戦略」により大きく進展したものの,産業界でそのインフラを十分に使いこなしていないと指摘した。「米国のブロードバンドはたかだか500kビット/秒にもかかわらず,グーグルやヤフーなど非常に大きな産業が花開いている。これに対して100Mビット/秒の日本は,いまだに単なるインフラどまりだ」(有冨審議官)。

 そのうえで,これからの日本が目指すべき姿を「ユビキタス・エコノミー」と名付け,「幅広い一般利用者が能動的に新しいICTを使いこなすことによって,ライフスタイルの本質的な変化と社会構造の改革を成し遂げていかなければならない」(有冨審議官)とした。さらに,そのために総務省が果たすべき役割の一つが,「IP時代にふさわしいきちんとした制度設計」であるとの認識を表明。NGN(次世代ネットワーク)の姿が見えてくる2010年をターゲットに新しい競争政策に取り組む考えを示し,具体例として先ごろ公表した「新競争促進プログラム2010」を紹介した。

 また有冨審議官は,無線ブロードバンドやNGN構築の動向にも言及した。無線ブロードバンド技術については,「大きな流れがWiMAXにある」とWiMAXに強い期待感を示す一方で,NGNについては課題を列挙。「ユーザーがNGNをどう使いこなせるようにするか,通信事業者がいかにオープンなものを作ってアプリケーション・プラットフォームとして機能させていくかがキーとなる」と述べた。

 講演の最後には,ユビキタス・エコノミーの構成要素と政策課題を示したスライドを再度掲示。「産学官プラス利用者まで4者一体となってユビキタス・エコノミーの実現に取り組んでいかなければ,日本の経済成長はおぼつかない」と締めくくった。

 Network Summitは,今年で4回目を数える企業の情報・ネットワーク戦略に焦点をあてた総合イベント。「企業経営を変革する情報・通信戦略」というテーマを掲げた今年は,9月12日と13日の2日間にわたって開催される。12日午後にはグーグルの村上憲郎代表取締役や堺屋太一氏の特別講演が予定されているほか,13日にはジャーナリストの嶌信彦氏の基調講演も行われる予定。