中堅・中小企業の市場開拓を狙い、ソリューションプロバイダがそれぞれの強みを生かしながら、独自のアプローチを展開し始めた。コンサルティングやワンストップサービス、低価格化や業務ノウハウなど、システムインテグレーション技術だけでなく、中堅・中小ユーザーに向けて様々な付加価値で勝負しようとしている。スリーエスフォーラムや東芝パソコン、ソースネクスト、イーステムコミュニケーションズなどIT企業4社の事例を取材した。

 税務・会計を中核に、中堅・中小向けのソリューション事業まで展開するスリーエスフォーラム(千葉市、前原東二社長)は、パッケージをコアに業務の分析・改善などのコンサルティングの部分を、さらに強化していく考え。弥生やオービックビジネスコンサルタント(OBC)、応研やピーシーエーなどの業務パッケージからERP(統合基幹業務システム)まで扱っており、各ユーザー企業の状況に応じてパッケージを提供しているが、「既に製品の機能は充分にレベルアップしている。それを、いかにユーザー企業の業務に適用していくか、が問われている。当社の場合は経営コンサルティングからシステム導入までワンストップで対応できるのが強み。これをもっと強調していきたい」(長谷川剛・取締役ネットワーク事業部長)。

 東芝パソコンシステム(千葉市、矢島勝美社長)のソリューション事業部は7月から、「TOPIS:Tops Onestop Infrastructure Solution」という概念を打ち出している。システムの提案から設計・開発、導入、運用支援・保守、アフターサポートまで、ワンストップでソリューションを提供できる強みをアピールするためだ。同社はソードを母体にした企業で、現在は東芝グループの傘下でOBCの奉行シリーズなども扱っている。TOPISではERPなどパッケージだけなく、セキュリティやネットワーク、運用管理やバックアップなど、これまでの実績を踏まえたトータルなシステムインテグレーション能力を強調している。「新しい概念のTOPISをアピールしていくことで、ソリューション事業の売り上げ拡大につなげたい」(岡田雄三・取締役ソリューション事業部長」。

 1980円と低価格なソフトシリーズを次々と販売しているソースネクスト(東京都港区、松田憲幸社長)は、これまで中心だった個人向けのソフトに加え、中小企業向けの業務ソフトの販売も開始した。第1弾として経理業務の「会計上々 START」、販売管理の「販売上々 START 仕入・在庫編」「販売上々 START 売上編」を5月に発売し、第2弾として9月1日からは給与明細書を作成する「給与上々 START」、顧客情報を管理する「顧客上々 START」のほか、見積書を作成する「見積上々 START」を追加している。これらはマグレックスの製品を基に一部の機能を省いたもの。社員数が10人以下で、パソコンで業務を処理していないような市場がターゲット。メインの販売ルートは家電量販店などだが、今後は法人向けのビジネス展開も視野に入れていく。アップグレードなどはマグレックスで対応する。「個人事業主が購入するほか、経理の勉強用に使ってみようというケースもあった。1980円とハードルが低いので、今までとは新しい使い方や市場開拓につながる」(青谷征夫・取締役プロデユースグループ担当執行役員」と期待する。

 ソースネクストではこのほか、法人向けなどをターゲットにした製品も販売している。例えば最近では、年間更新料を無料にした「ウイルスセキュリティZERO」た、PDF作成ソフトの「いきなりPDFシリーズ」などが好調だった。特にいきなりPDFの場合、大手ユーザーが全社員に1個ずつ配布するなど、大量注文につながったという。「当社の場合、ソフトは文具という概念で販売している。システムは1社に1つだが、文具となると全社員に必要になるから大きな商談になる。新製品は自社でアイデアを出すだけでなく、様々なIT企業との共同開発も多い。今後も1980円という価格で、新しい市場を切り開いていきたい」(藤本浩佐・取締役コモディティ化推進グループ担当執行役員)。

 システム開発会社が、自社のユーザーである企業をM&A(企業の合併・買収)で傘下に収めたケースもある。コールセンターやWebシステムなどを開発するイーステムグループは、電話による問い合わせ業務などを代行する秘書センターをグループに加えた。秘書センターは、一般的なコールセンターではなく在宅オペレータを活用することで、低コストで365日対応できるユニークな手法を打ち出している企業。イーステムグループのイーステムコミュニケーションズ(東京都港区、伊藤壽朗社長)が在宅オペレータ向けに新しい分散型コールセンターを独自開発して導入していた。そこで自社の技術力をアピールしていくためにも秘書センターを買収し、イーステムグループの傘下に収めた。「在宅オペレータを活用するなど、分散型コールセンターの事業ノウハウも得られる。システムの技術力だけでなく、こうした事業ノウハウの部分を武器にして新たな事業展開につなげたい」(イーステムコミュニケーションズの橋口和悦・取締役ITソリューション事業部長)。