「クライアントでも、1つのマシンで複数のOSが稼働できる仮想化技術が重要になる」。インテルの廣田洋一マーケティング本部ビジネス・クライアント・プラットフォーム・マーケティング部部長はこう語る。インテルは9月8日、米ヒューレット・パッカード(HP)など各メーカーの企業向けパソコンに、運用管理の効率化やセキュリティの強化、仮想化などを実現する同社の「vProテクノロジー」が採用されたと発表した。

 vProテクノロジーとは、デュアルコアプロセッサ「Core 2 Duo」やチップセット、ネットワークチップや、それらに組み込まれた運用管理やセキュリティ、仮想化機能などデスクトップパソコン向けの技術をまとめたソリューション。廣田部長は、クライアントが仮想化機能を持つことにより、様々な企業向けのシステム商談が生まれるという。

 その1つは、次期クライアントOS「Windows Vista」へのアップグレードに伴う商談だ。「移行の際には、Windows XPでしか動作しない業務アプリケーションが出てくる。その場合、新旧OSをそれぞれ搭載したパソコンを2台用意するよりも、1台のパソコンで両方稼働させたほうがコスト面でもいい」。クライアントOSの移行で一部の業務アプリケーションが動作しなくなる問題は、Windows2000からXPにアップグレードした際にも発生した。

 さらに金融機関や官公庁への適用例も挙げる。この場合も、セキュリティの問題でイントラネットにしか接続できないパソコンと、インターネットに接続できるパソコンの2台を使い分けているケースがあるからだ。「仮想化技術を使えば、この2台のパソコンを1台にまとめつつ、セキュリティを確保できる」と語る。

 クライアントのセキュリティを運用面で強化できる可能性もある。それは、「IT部門がクライアント管理やセキュリティ対策のため特別な設定やソフトを施しても、システムに詳しいエンドユーザーが勝手に設定を変えてしまうという問題が多い」(廣田部長)ことへの対策だ。仮想化機能を使ってIT部門しか操作できない論理領域を作り、管理したい設定、ソフトついてはエンドユーザーが勝手に変更できないようにするといった活用が考えられるという。

 ちなみに、既に海外では米HPがvProテクノロジーを搭載したパソコンを発表しているが、インテルは「国内向けの出荷やメーカーの対応についての正式な発表は10月になる」(廣田部長)とする。また来年には、vProテクノロジーと同様の機能強化を施したモバイルパソコン向けの「Centrino 2 Duo(開発コード名Santa Rosa)」を提供する予定である。