ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は9月6日,緊急で記者会見を開き,次世代ゲーム機「プレイステーション 3(PS3)」の量産計画が1カ月遅れたことを明らかにした。当初,9月初旬に量産開始を予定していたが,月産100万台レベルの本格量産が始まるのは9月末にズレ込む見通しという。これに伴い,欧州での発売時期を2007年春に延期する。ただし,日本の発売予定日11月11日および米国の発売予定日11月17日は死守する。

 米国では11月23日に「Thanks Giving Day(感謝祭)」と呼ぶ祝日がある。この時期からクリスマス商戦が始まることもあり,この時期に発売できないと痛手が大きい。9月末に量産を始めた完成品は,まず米国市場に向けて優先的に輸出する。日本ではソニーの木更津工場,中国ではEMS企業などが量産を請け負うが,米国への輸出のロジスティック確保が悩ましい問題だ。PS3は本体だけで5kg,周辺アクセサリを含めると7kgになる。これだけの重量の商品を米国に全数空輸すると,コストが見合わない。船で送ると時間がかかる。今回の量産遅れによって,この輸送計画をいかに立てるかがポイントとなる。発売日までに米国に40万台を出荷,その後は週に10万~20万台で供給する予定という。

日本市場では発売日に10万台止まり

 では,SCEお膝元の日本市場はどうか。11月11日の発売時には,10万台の確保が精一杯のようだ。その後,年末までに週に10万台程度を日本市場に向けて出荷する。この結果,当初は年末までに世界市場で400万台という目標を掲げていたが,日米市場分を合わせて年内の出荷台数は200万台程度になる見通しである。

 残念ながら,世界同時発売は実現できず,欧州市場におけるユーザーが最も待たされることになった。その理由は,製造地からの距離が遠く,適切なロジスティックの確保ができなかったことが第一に挙げられる。加えて,ソフトウエア・ベンダーの対応も,どうしても欧州市場向けの製品は後手に回りがちだ。多くの言語に対応する必要があるからだ。欧州向けの製品出荷は2007年1月以降になる。輸送には船を使う。欧州市場分100万台を確保できる3月上旬が,再設定される欧州発売日となりそうだ。

Blu-ray用半導体レーザー・チップの量産がトラブル

 では,量産出荷が遅れた原因は何だったのか。その理由は,Blu-ray Disc(BD)ドライブに用いる青色半導体レーザーのチップだという。現在,Blu-ray Discドライブも発売されているが,市場に出回っている数は少ない。この規模であれば,半導体チップを確保できるが,月産100万個レベルでの量産には至っていないという。

 SCEは,ソニー白石工場に半導体チップの量産を委託していた。半導体チップの実験試作および量産試作までは何ら問題がなかったという。ただし,複数の「炉」で製造を開始しようとした7月ころ,一部の炉では高い歩留まりを確保できるものの,他の炉では安定して量産できないという問題が発覚した。製造炉の違いに対応して製造装置のパラーメータを調整する作業に手間取り,ここに来てようやく,その調整方法が確立しつつあるという。「1カ月の量産遅れですむメドが立ったことから,今回,発売遅れの経緯と今後の見通しについて発表することになった」と同社は説明する。