写真 シンポジウム「次世代ネットワークの展望」の様子(主催:日本経済新聞社)
写真 シンポジウム「次世代ネットワークの展望」の様子(主催:日本経済新聞社)
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 9月4日,「次世代ネットワークの展望」と題されたシンポジウムが日本経済新聞社の主催で開催された(写真)。パネリストは,NTTやKDDI,日本テレコムといった通信事業者に加え,総務省や慶応義塾大学の村井純教授などの有識者で構成。「次世代ネットワーク(NGN)とは何なのか」,「NGNの登場で現在のインターネット社会はどう変わるのか」などのテーマで討論が進められた。NGNは,信頼性向上や帯域保障など従来のIP網を高度化させた次世代のIPネットワークのこと。

 議論に当たっては,まずNTTの雄川一彦次世代ネットワーク推進室担当部長,KDDIの三澤康巨技術渉外室企画調査部長,日本テレコムの弓削哲也専務執行役員CTOが順番に,それぞれのNGN構想の概要を説明した。しかし,その他のパネリストからの意見発表では次々と,NGNに対して厳しい指摘が飛び出した。

 日経新聞の関口和一産業部編集委員兼論説委員は,「NGNで一体何をやろうとしているのか,世の中がどう変わるのかといった点がクリアでない。実用性を無視してインフラ投資を進めても,これらが明確にならないと“絵に描いた餅”になる」と指摘。NGNが出来上がったあとも,キャリアのNGNごとに「サービスの囲い込み」が発生してユーザーの利便性を損なうのではないか,NGNのサービスは全国で平等に使えるようになるのか,携帯電話端末のようにサービスや端末が高度化し過ぎても世界から孤立して,産業の国際競争力を本当に実現できるのか――などの問題を提示した。

 慶応義塾大学の國領二郎教授も同様の指摘を展開。「どこにどれくらいの需要があるのかといったマーケティングを無視すると,ユーザーにそっぽを向かれる。これは通信業界がよくやってきた失敗でもあり,多額の投資をしてきたにもかかわらず,受け入れられなかった技術やサービスはこれまでも死屍累々とある」と言い切り,現在のNGNの進め方に疑問を呈した。

 一方,日本のインターネットをけん引してきた慶応大学の村井教授は,「インターネットは今後もたくましく成長し,NGNも発展してくるだろうと」と発言。意外にもインターネットとNGNの共存に楽観的な見方を示した。ただしNGNを標準化しているITUのやり方には批判的で,「ITUの標準化では時間がかかりすぎて,マーケット志向の技術標準が作れるのだろうか」との疑問を投げかけた。