農業者の年金を運用・給付する独立行政法人の農業者年金基金が、1970年代前半(昭和40年代後半)から利用している年金の給付額や徴収状況を管理する基幹システムのレガシー・マイグレーションを完了、本格稼働を始めた。年々増え続けるメインフレームの運用コストを削減する必要があったのに加え、システムに関する業務の委託先である農林中央金庫が受託業務の中止を決めたため、自力でのシステム運用に向けてマイグレーションの実施を決めた。

 今回の移行では、富士通のメインフレームで稼働していたCOBOLプログラムや帳票、データベース(VSAMなど)、JCL(ジョブ制御言語)を、日立製作所のオープン系サーバー「HA8000シリーズ」に移植した。移行作業は日立情報システムズが協力し、ドット研究所が開発した「dotCOBOLコンパイラー」などを利用した。マシンはこれまで農林中金のサーバー・ルームに設置していたが、今回から農業者年金基金にあるサーバー・ルームに移管した。テープ装置やデータ保管用のサーバーは、日立情報システムズのデータセンターに置く。

 同社が作業を始めたのは2005年4月。旧システムは、制度が変わるたびに新たにマスターを作って拡張を繰り返しており、プログラムなどの量は膨大だったが、調査・分析したところ、「全体の10%は使われていないことが判明した」(農業者年金基金の数理・情報技術役の稲垣誠一氏)。

 そこで、必要なプログラムやJCLだけを抽出するダウンサイジングを実施したうえで、移植作業を進めた。対象となるプログラムは1041本、JCLは179本。その際に、取引データを富士通のホスト端末系のコードである「JEFコード」で出力する機能を追加した。支払い業務のためにデータを農林中金に引き渡す必要があるため、農林中金が利用するJEFコードに対応した。

 移行作業は、GOTO文を使ったプログラムなど一部を改変したものの、「99%以上はプログラムにまったく手を加えないストレート・コンバージョンで移行できた」(日立情報システムズ システム開発事業部の山田隆主任技師)。06年の3~6月まで新旧システムを並行稼働し、7月から新システムに切り替えた。コスト削減効果の試算はこれからだが、バッチ処理にかかる時間は「従来の約半分になった」(稲垣氏)とみている。マイグレーション費用は、ハードウエア込みで1億5000万円。

訂正:これまで「全体の7%しか使われていないことが判明した」とありましたが、正しくは「全体の10%は使われていないことが判明した」だったことが判明したため、修正いたしました。お詫びいたします。