マイクロソフトは8月30日,システム管理者向けイベント「TechEd 2006 Yokohama」で次期サーバーOS「Longhorn Server」の新機能を紹介した。ファイル処理が失敗した場合に,ファイルを元の状態に復元できる「トランザクショナルNTFS」や,「.NET Framework 3.0」の新機能である認証管理技術「Windows CardSpace」の詳細などを日本で初めて公開した。

 米Microsoftは既に,6月の「TechEd 2006 Boston」でLonghorn Serverの概要を公開している(関連記事:【TechEd速報】Longhorn Serverの10個の魅力)。TechEd 2006 Yokohamaのセッション内容も,Bostonのセッションが元だったが,新しい情報も追加されていた。それが「トランザクショナルNTFS」や「Windows CardSpace」などだ。

ファイル処理の不正終了に備えるトランザクショナルNTFS

 トランザクショナルNTFS(略称はTxF)はその名の通り,ファイル・システムにトランザクションの仕組みを実装したもの。ファイル処理が失敗した場合でも,元の状態にロールバックできる。同様にレジストリも,トランザクショナル・レジストリ(略称はTxR)になる。両機能とも,Longhorn Serverだけの新機能ではなく,Windows Vistaにも実装される。

 マイクロソフトIT Proオーディエンス部の高添修エヴァンジェリストは「トランザクショナルNTFSは,ロング・トランザクションを記録するためのものではない」と語る。つまり,ユーザーがファイルを誤って変更した際に元の状態に戻すような用途には,通常の手順でとられたバックアップや,既にWindows Server 2003に実装されているスナップショット技術「Volume Shadow Copy Service」(Windows Vistaにも搭載される)を使うのが望ましい。「トランザクショナルNTFSは,バッチ処理で大量のファイル名を変更しようとしていて,途中で処理が終了してしまった場合などに利用するもの」(高添氏)だという。

 トランザクショナルNTFSは,コマンド・ラインから利用できる。コマンド・ラインで「transaction /start」と入力すると,トランザクションが開始される。トランザクションをコミットする(変更をファイルに反映させる)際は「transaction /commit」である。

 このほかファイル・システムに関しては,パーティションの容量を後から変更できる「ダイナミック・パーティショニング」が紹介されている。

「Infocard」の正式名称は「CardSpace」に

 Windows Vistaに搭載されるアプリケーション・プラットフォーム「WinFX」は,正式名称が「.NET Framework 3.0」になった。また認証管理技術「InfoCard」は,.NET Framework 3.0の一部となり,名称が「Windows CardSpace」となった。Windows CardSpaceでは,ユーザーは自分の認証情報を,ソフトウエア的な「カード」として複数個保存できる。電子商取引サイト(Eコマース・サイト)などで認証を求められた際に,ユーザーはそこで使いたい認証情報を,画像化されたカードのリストから選択して利用できる。

 Windows CardSpaceの詳細については,関連記事「Windows Vistaの知られざる目玉機能は『InfoCard』」を参照して頂きたい。

 Longhorn Serverには,多数の新機能が搭載される。今回のセッションでも,「Server Core」と呼ばれる,サーバー・サービスを最小限のものだけに絞った,GUIも搭載されないサーバー設定などがデモされた。これら基本機能やセキュリティ機能に関する機能強化点は,関連記事「【TechEd速報】Longhorn Serverの10個の魅力」を参照して頂きたい。またLonghorn Serverで大きく強化される機能として,ターミナル・サービスもセッションで紹介された(関連記事:【TechEd】Longhornでターミナル・サービスを大幅強化)。

Longhornの仮想化機能は「製品出荷後180日以内に提供」

 なお,Longhorn Serverにはシステム仮想化機能「Windows Operation System Virtualization」が搭載されるが,マイクロソフトはこの機能について,「初期出荷版のLonghorn Serverには搭載せず,Longhorn Serverの製品出荷後180日以内に別途提供する」(高添氏)ことも明らかにした。