マイクロソフトは8月29日,システム管理者向けイベント「TechEd 2006 Yokohama」で,CRM(顧客関係管理)ソフト「Dynamics CRM」を日本で初めて披露した。顧客管理や営業支援を目的とした,同社初の業務アプリケーションであり,「Outlook」をクライアント・ソフトに利用するのが特徴。9月8日に出荷を開始する。

 米Microsoftは現在「Dynamics」ブランドで業務アプリケーション事業を展開している。会社ごと買収した製品がほとんどだが,CRMのほかERPパッケージなども販売している。「Dynamics CRM」は,日本で販売する業務アプリケーション第1号となる。

「上司ではなく現場のスタッフを助けるCRMソフト」

 「Dynamics CRMは,マーケティング活動,商談・営業活動,顧客サポート活動を支援するアプリケーション。エンドユーザーが慣れているOutlookをユーザー・インタフェースに使用しているので,新しいアプリケーションの操作を一から覚えてもらう必要がない。『営業支援ソフトは,上司が営業スタッフを管理するためのもの』と思われては,現場に浸透しない。Dynamics CRMは使いやすく,営業活動も楽になるので,現場の営業スタッフに支持してもらえる」(マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部テクニカルサポート部の内橋雅樹シニアテクノロジースペシャリスト)。

 Dynamics CRMではクライアントに,OutlookとInternet Explorerを利用する。営業スタッフが普段利用するのはOutlookで,アプリケーションの設定を変更したりするのにInternet Explorerを使用する(Outlookを使わずにInternet Explorerだけを使用することも可能)。

 Outlookをクライアントに使う利点は「社員間でやり取りする電子メールや,予定表に登録したイベントなどを,営業案件に結び付けられること」(マイクロソフトの内橋氏)。Dynamics CRMのクライアント・モジュールをインストールすると,OutlookにDynamics CRMのツール・バーが追加される(写真1)

写真1:Outlook 2003に組み込まれたDynamics CRMのツール・バー

 他の社員に電子メールを送信したり,予定表のイベントを送ったりする場合も,写真2の[関連]をクリックして,顧客や営業案件データと連携できる。

写真2:他の社員に電子メールや予定表のイベントを送信する際には,[関連]をクリックする

 こうして営業案件に連携させた電子メールやイベントは,あとから営業案件ごとにソートして閲覧可能(写真3)。顧客に対してどのようなアプローチをしたのか,追跡可能になるのだ。「予定表にある会議がどういう経緯で開催されるものなのか,把握するのが容易になる」(内橋氏)。

写真3:営業案件ごとに電子メール・メッセージや予定表のイベントといった「営業スタッフの活動履歴」をソートできる

 顧客や営業案件データは,Exchange Serverのパブリック・フォルダを閲覧するのと同じ感覚で,Outlookの左側の画面にあるツリーからたどって閲覧できる(写真4)。CRMアプリケーションを利用するのに,特別なアプリケーションやWebサイトを開く必要はない。

写真4:Outlook 2003に追加されたDynamics CRMのフォルダ