NTT東日本の東方幸雄ネットワーク事業推進本部サービス運営部災害対策室長
NTT東日本の東方幸雄ネットワーク事業推進本部サービス運営部災害対策室長
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 NTT東日本は8月25日,8月30日からの防災週間に先立ち,同社の防災対策に関する説明会を開催した。登壇したのはNTT東日本の東方幸雄ネットワーク事業推進本部サービス運営部災害対策室長(写真)。耐災性強化をはじめとするネットワークの信頼性向上,安否確認のトラフィックが急増しても重要通信を確保,災害後のサービスの早期回復,といった三つのポリシーを紹介しつつ,NTTの日ごろの災害対策を説明した。

 1960年代~1990年代前半までは,非常用可搬型ディジタル交換装置や可搬型衛星局などの開発といったハード面の対策が主だったが,1990年代後半からは,避難情報の配信の仕組みなど,ソフトを中心とした対策へと移っているという。

 過去の災害における具体的な対策事例として2004年10月に発生した新潟県中越地震での取り組みを紹介。57カ所のビルで商用電源が停電,中継伝送路が6カ所で断線,三つの交換所のエリアで通信孤立,約4500加入の電話が途絶――などの被災に対し,NTT東日本の周辺支店から移動電源車などを派遣して対策にあたった事例を詳しく解説した。

 さらに東方室長は,政府でも危機対策を検討している首都直下地震で想定されている被害も報告。マグニチュード7.3の地震が発生した場合のシミュレーションを基に,通信設備はラストワンマイル部分のケーブルの焼失や地下ケーブルの切断が起こり,広範囲で長期間の輻輳(ふくそう)が発生するとの被害予測を公表した。阪神・淡路大震災での輻輳期間は5日間だったが,首都直下地震の場合は7日~10日にもなりそうだと予想する。また,ケーブル延長に換算すると,「阪神・淡路大震災と比較して10倍の被災が想定され,すべてを復旧するのは2週間でも難しい。1カ月くらいはかかるのではないか」との厳しい見通しも発表。NTTグループとしても万全の復旧体制を取るが,各企業,各機関でも事業継続計画(BCP)を作り対策を取ってほしいと訴えた。

 今回の説明会で,東方室長が特に強調したポイントは,災害伝言ダイヤル「171」の使い方の啓発だ。171の認知度をできるだけ上げると同時に,「被災地外からの安否確認の問い合わせではなく,被災地内からまず自分の安否を知らせるために録音する使い方を啓発したい」と語った。まず自分の安否を被災地外へ伝えることで,不必要な人の移動に伴う二次災害や復旧作業の妨げを防げる,との主張である。

 171の啓蒙活動の一環として,東西NTTとNTTコミュニケーションズは8月30日から9月5日までの防災週間に限り,災害用伝言ダイヤル(171)と災害用ブロードバンド伝言板(web171)」を,全国で体験利用できるようにする。