写真:東京工業大学学術国際情報センターの松岡聡教授
写真:東京工業大学学術国際情報センターの松岡聡教授
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 「HPC(High Performance Computing)はエリートのためだけのものではない。東京工業大学は,HPCでシミュレーションができる人材を育成して,HPCの大衆化を推進することで,新しい産業を生み出そうと考えている。そのために,使いやすくて,既存のソフトウエア資産などを移行しやすいWindowsでHPCを構築した」---東京工業大学学術国際情報センターの松岡聡教授(写真)は8月24日,マイクロソフトのHPC用Windows「Windows Compute Cluster Server(Windows CCS) 2003」の発表会で,同大学がWindows CCSを先行導入した理由をこう語った。

 東京工業大学学術国際情報センターは,2006年4月に日本最速のスーパー・コンピューティング・グリッド・システム「TSUBAME(Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment)」(理論演算性能値85TFLOPS,Linpackベンチマークでは38.18TFLOPS)を稼働したことで知られている。TSUBAMEはLinux(SuSE Linix Enterprise Server9)ベースだが,東工大ではこれとは別に,Windows CCS 2003ベースのHPCシステムも運用する。

 Windows CCS 2003ベースのHPCシステムに関しては,米IntelのXeonプロセッサを搭載する65ノード(計130プロセッサ)を既に運用しているほか,米AMDのOpteronプロセッサを搭載する35ノード(計140プロセッサ)も今後運用を開始する。Windows CCS 2003のノードは合計100ノード(290プロセッサ)になり,論理演算性能値は1.4TFLOPSになる。

 TSUBAMEとは別にWindows CSS 2003ベースのHPCシステムを導入する理由が,冒頭に述べた「HPCの大衆化」(松岡教授)である。松岡教授は「学生が普段使っているコンピュータはWindowsだし,Visual Studioで開発をしている学生も多い。Windowsは多くの学生にとってなじみのあるプラットフォームだ。また,既存のWindows用ソフトウエア資産そのものもHPCでも利用できるのが,WindowsでHPCをやることのメリットだ」と語る。

 「それこそ,Excelを使ったシミュレーションをHPCで実行してもよい。金融の実務家は,運用ポートフォリオのシミュレーションのモデルをExcelで開発している。HPCを使えば,Excelを使った何万件にも及ぶシミュレーションが簡単にできるようになる。100日かかっていたシミュレーションが1日に短縮されたりするのだから,HPCの効果は絶大だし,需要は非常に大きい。しかも,Excelで開発したモデルをFORTRANに移植するのと違い,既存ソフトウエア資産そのものが活用できる」(松岡教授)。

 Windows CCS 2003日本語版は,10月2日に出荷される。多数のWindows Serverをネットワークで接続して,高い演算性能を持つHPCクラスタを構築するための専用OSになる。HPCクラスタを構築する通信ライブラリ「MS-MPI」のほか,リソース管理ツール,ジョブ・スケジューラ,パフォーマンス・モニターなどを搭載する。価格はサーバー1台当たり9万200円(推定小売価格,ボリューム・ライセンス制度の「Open Business」適用時)である。通常のWindows Serverと異なり,CAL(クライアント・アクセス・ライセンス)は不要である。なおWindows CCS 2003は,AMD64またはIntel 64対応のプロセッサ(x64)でのみ動作する。