上原 始氏 京セラ グローバル監査部

 「『IT(情報技術)のことは分からない』という人はSOX法対応プロジェクトのリーダーには不適切。情報システム部門の人を最初からメンバーに加えておくべきだ」。

 京セラのグローバル監査部で内部統制に取り組んでいる上原始氏は8月23日午前,東京・有楽町で開催中の「内部統制ソリューション展」の基調講演において,こう強調した。米国上場企業として,SOX法(企業改革法)に対応するための内部統制整備を進めた経験を基に,取り組みのポイントを話した。京セラグループのSOX法対応プロジェクトの対象は約60拠点に及び,洗い出した業務プロセスは約2000,キー・コントロール数は約14500という規模になる。

 上原氏は,「多くの企業で日本版SOX法(金融商品取引法)の適用開始までの期間は1年半しかないが,あわてる必要はない」と話した。京セラグループでは,プロジェクト・メンバーが知識を習得する,「リスク」に対する考え方や想定レベルを全社的にすり合わせる,支援ツールを選定する---といった準備段階に多くの時間を割いた。こうした準備が不十分だと,作業の手戻りにつながるという。

 京セラグループでは「アメーバ経営」などの経営手法が定着しており,部門ごとに独立意識が強い。工場では拠点ごとに独自の生産管理システムなどを使っていることも多い。棚卸資産の計上など財務報告に直結するものもあり,これにかかわる内部統制整備に苦労したという。「今後は内部統制の側面から,ある程度は情報システムを統一するなど,見直しも必要かもしれない」と話した。

 講演の最後には,京セラの創業者である稲盛和夫・名誉会長の著書『実学-経営と会計』(日本経済新聞社)から,「人の心が持つ弱さから社員を守る仕組みが必要」という言葉を引用。「内部統制にかかわる人は,性善説か性悪説かという以前の問題として,社員に罪を犯させない仕組みを作るという心構えを持つべきだ」と強調した。