インターネット・サービス・プロバイダーの大手であるニフティ(東京・大田)が、サイトのコンテンツ開発体制の強化のため、チーム制組織を主軸とする人事組織を強化している。

 同社は2003~2004年度に売り上げが伸び悩んでいた。だが、2005年度の売上高は前年度と比べて約4%増の683億円と3年ぶりに増加に転じた。組織改革を通じて人気コンテンツの開発気運を高めるのに成功したからだという。

 もともと、同社は富士通と日商岩井(当時、現・双日)の共同出資で設立。1987年にパソコン通信サービスを開始したネット関連業者の老舗である。80~90年代はパソコン通信サービスと、顧客しかアクセスできないコミュニティをベースに売り上げを伸ばした。だが、この3月にパソコン通信のアクセスポイントを廃止して、過去のユーザー囲い込みモデルと完全に決別。電子会議室ベースのコミュニティ「フォーラム@nifty」も利用者減少を受けて来年3月で終了させる。

 既に2003年からブログサービスなども手掛けてきた同社は、今後は他のネットベンチャーと同様に、広告収入やショッピング利用につながる人気コンテンツを開発することで、売り上げの成長を図る構えだ。

 この3月末には、NTTドコモのiモード対応スポーツ情報サイト「Sports@niftyモバイル」を、現場提案から3カ月ほどで立ち上げ、スポーツ情報関連のドコモ公式サイトの中でアクセス数1~2位を競うようになるといった成果を生んだ。

 こうした動きの裏で昨年から進めてきたのが人事制度の見直しだ。従来の部課長制を改め、社長の下に、一般企業の執行役員に相当するグループ長、その下に約60のチームが並ぶ2階層の組織に変更した。人事評価の権限を従来の部課長クラスから、数人ごとの現場チームのリーダーに委譲すると同時に、チームごとの活動目的やチームリーダーの成果責任を明確にした。従来よりもウェブのデザインや遊び心などの感覚に優れた若手にリーダーシップを発揮させる狙いだ。

 チームリーダーに抜擢された社員には、従来の職位における部課長クラスもいれば平社員もいる。それぞれのチームはメンバーが協議して、担当分野のコンテンツで売り上げをどの程度伸ばすといったことを記載した「成果計画シート」を半期に1度書いて、社内で公表する。

 従来は、主に課長が部下の30人ほどを評価していたが、一人ひとりの仕事のプロセスをつぶさに観察して評価しきれない問題を抱えていた。現制度では、チームリーダーがそれぞれ、5~6人のメンバーを評価する権限を持つ。「まずはチームとしてどんな成果を出したかが、メンバー評価の前提。従来に比べて、チームの成果ありきの人事評価だという意識を徹底させている」(古河建純社長)。

 リーダーがメンバーを評価した結果については、所属グループやチーム間の評価の「甘い・辛い」はあえて調整はしない。ただし部長、課長といった肩書きはグレードとして引き継いでおり、チームリーダーの中でも決裁できる金額などに差がある。直属上司のグループ長が、チームリーダーを部長や課長へ昇進させようと推薦した場合に限っては、評価の客観性を担保するプロセスを取り入れた。その候補者が昇進試験 を受ける前に、外部の人事コンサルタントが面談して半数程度に候補者を絞り込むことにした。

 2005年のチーム制初年度の運営を通じて、運営方法の見直しも続けている。2年目の今年は、4月の年度初めに、まずグループ長とチームリーダーの計80人ほどが集まり、「チーム活動方針プレゼンテーション」を開いた。これは「ただ単にチーム制を導入しても、横の連携が悪く、デザイン改善やコンテンツ開発の上で、同じような課題を抱えていても協力し合わない、といった問題点が2005年度に見えたため」(古河社長)である。そこで年度初めにチームの活動方針をプレゼンテーションし合うことで、互いに協力できる部分を確認し合うといった機会を作った。また、デザイン向上を目標に掲げるチームがいくつか出てきたことで、見栄えの良い画面をチーム同士で積極的に話し合う雰囲気が生まれたという。

 古河社長は、「従来の人事評価制度ではどうしても、成果目標が個人主義的になったり、一人ぐらいサボっても組織としての成果にさして影響がないといった意識が残っていた。新制度ではチーム内の数人が緊密に協力しあって成果を出さなければいけないという意識が強くなっている。今春生まれたiモード対応スポーツ情報サイトも、チームとして成果を出そうという挑戦心を引き出せた成果」と新制度を評価している。