日本総研ソリューションズの小名木正也 社長
日本総研ソリューションズの小名木正也 社長
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 日本総研ソリューションズは今年7月、日本総合研究所から分社し、同社の100%子会社として発足した。今後、日本総研はシンクタンクとしての活動や三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)向けのSI事業に特化。SMFG以外の企業や官公庁向けのSI事業は、日本総研ソリューションズが担っていく。その日本総研ソリューションズの初代社長に、日本IBMで営業部門のトップを務め、2005年1月に日本総研に転じた小名木正也氏が就任した。同氏に、今後の戦略を聞いた。

――日本総研の売上高は05年3月期に1112億円で、日本総研ソリューションズが承継する部門の売上高の合計は約33%にあたる365億円。規模が小さくなってでも分社化しなければならないのか。

 銀行やカード事業会社といったSMFG各社のシステムを手掛ける場合、最も求められるのは、各社のニーズをきちんとシステムに反映することと、24時間365日の安定稼働を実現すること。グループ部門のなかのコストセンターとしての色合いが濃く、利益を上げることは、あまり重視されない。

 一方、外のお客様からは、ニーズの吸い上げも含めてシステムを構築することが求められる。システムの内容によっては、何よりも開発のスピードが求められることもある。また、当然ながら、利益を上げていかなければならない。

 このように性格が大きく異なる二つの事業部門の人員は、SMFG向けが1600人で、グループ外向けが1300人。どちらかというと会社としてはSMFGのIT部門としての考えが強くなってしまいがちだった。このような状況でグループ外向けの事業を強化するには、分社させた方がいいと判断した。

 分社化を機に、社内のルールも見直している。すでに個々の執行役員や事業部門が決裁できる金額を、日本総研時代に比べて引き上げた。これからも権限を現場に委譲し、フラットな組織にしていくことで、経営スピードを上げていきたい。

――いま、SI事業各社は収益率の悪化に苦しんでいる。その中で、どのようにして収益モデルを確立していくのか。

 確実に儲かるモデルは三つある。一つ目は、競争相手がいないこと、二つ目が、たとえ競争相手がいても、自社の製品・サービスに強い優位性があること。そして最後の三つ目は、競争状態にしないことだ。

 例えば日本総研が「製薬業界におけるSAP導入に強い」と言われていたのは、二つ目のモデルがうまくいっていたから。日本総研ソリューションズとしては、当然ながら、これを継承していく。ただ、今後さらに成長するには、三つ目のモデルに注力すべきだと考えている。

 これまではお客様からRFP(提案依頼書)をいただき、ソリューションを提示する形の営業になりがちだった。しかし、私のIBM時代の経験から、もっとお客様の中に入り込んで、その要望を汲み取らなければならないと感じている。こちらがお客様の問題点を見つけて、改善提案をしていくというわけだ。この形なら、他社と競争して価格競争に巻き込まれることも少ない。

――提案型営業を標榜するSI企業は多いが、必ずしも、うまくいっていない。どうすれば、社員は変わるのか。

 明確な意識付けが必要だ。そのために当社はこの8月から、顧客別の「アカウント・マーケティング」の体制を強化し始めた。アウトソーシングも含め、売上の上位5~10社に対して、営業やSEなど3~4人をチームにして専属でつける。担当の役員も決める。誰がお客さんをカバーするのかはっきりさせるわけだ。

 これを、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)やCRM(顧客関係管理)といったソリューションの事業部隊が背後から支える。1年後には30社ぐらいをアカウント・マーケティングの対象にしたいと考えている。

 社員教育としては、一つの案として、ECサイト運営事業者やホスティング事業者などへの「遊学」を考えている。いまユーザー企業では、インターネットを使った“非対面型”の顧客窓口が増えている。当社のお客様も、今は対面型が中心でも、これから非対面型に打って出ていく可能性がある。

 こうした状況で、当社から的確な提案を出していくためには、社員に、新しいビジネス形態を経験して身に付けておいてもらうことが重要だ。私の昔の部下がこうした業界にもあちこちに行っているから、そのツテもある。まだ具体的には決まっていないが、10月からでも4~5人を半年から1年ぐらい出したい。状況を見て、20人くらいを出してもいいのではないかと考えている。