住民はテレビや新聞で防災防犯情報を得ているのに、自治体は広報誌やホームページを通じての情報提供に熱心--。8月10日、神戸市内で「リスクコミュニケーションフォーラム in 神戸」が開かれ、そこで発表された防犯や防災情報に関する意識調査で、住民と自治体の間には様々なギャップがあることが明らかになった。

 最も大きな意識の差が見られたのが、「災害・防災情報の入手(伝達)手段」の項目。住民は、テレビが89.8%、新聞が85.8%と圧倒的にマスコミを通じて情報を得ているのに対して、自治体が情報発信に活用している手段は、広報紙が87.0%、ホームページが77.8%、防災訓練や地域イベントが70.0%と、まったく食い違っていることが分かった。面白いことに、同じ広報誌でも自治会など自身の所属する地域団体が発行しているものに対しては、51.2%の住民が情報源として活用していると答えている(伝達手段として活用している自治体は19.0%)。

 また、防災防犯活動を充実させるために、住民が新たにどの程度の費用を負担するかという質問では、負担したくないという住民は9.9%に過ぎず、月額300円以上負担してもいいという回答が過半数を超え、月額1000円以上という回答も7.0%あった。一方自治体側は、住民が負担する必要はないとの答えが28%で、最も多かった。

 調査を担当した、財団法人神戸都市問題研究所の大島博文研究員は、こうした意識差の解消手段として(1)地域のコミュニティFM放送やケーブルテレビの活用、(2)ホームページよりも身近な携帯メールによるリアルタイム情報の配信、(3)ホームページの活用による詳細情報の共有、の3点を指摘した。その上で「ホームページに掲載しただけでは不十分で、地域団体などが印刷して回覧するなどの手段が有効ではないか」と提言した。

 また、住民の費用負担については、「現状のように、公僕心の強い篤志家に頼っているのでは限界がある」と指摘。自治体の地域担当職員の積極的な関与、地域単位で費用を負担しての自警団創設など、有償化することで人材を確保していく必要が出てくるのでは、と指摘した。

 この調査は、財団法人神戸都市問題研究所が、2005年10月から11月にかけて実施した。住民は、兵庫県民を対象に1500人に郵送や自治会を通じてアンケートを実施して743人から回答を得た。自治体は、800団体にアンケートを郵送して466団体から回答を得た。