写真1 2007年3月期第1四半期(2006年4月から6月期)の決算を説明するソフトバンクの孫正義代表取締役社長
写真1 2007年3月期第1四半期(2006年4月から6月期)の決算を説明するソフトバンクの孫正義代表取締役社長
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写真2  「Yahoo!ケータイボタン」を説明するプレゼンテーション資料
写真2  「Yahoo!ケータイボタン」を説明するプレゼンテーション資料
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 「朝から晩まで携帯のことに集中している。ボーダフォンを買収できて本当に良かった」――。2006年8月8日,2007年3月期第1四半期(2006年4月から6月期)の決算説明会の冒頭,ソフトバンクの孫正義社長(写真1)はこう切り出した。

 今期はボーダフォンが連結に加わった初の決算。注目度はいつになく高く,1000名近くが着席できる発表会場は報道陣やアナリストで埋め尽くされた。ソフトバンクの今期の業績は,売上高が前年同期比2355億円増の4942億円と増大。孫社長は「(年間ベースで考えれば)約2兆円規模の会社になった」と感慨深げにコメントした。営業利益は前期に引き続き黒字の543億円。そのうち半分近い272億円がボーダフォンの営業利益である。経常利益は259億円と黒字だった。ただし特別損失などを差し引いた純利益は14億円にとどまった。

基地局は年度内4万6000カ所,HSDPAも10月に開始

 携帯電話事業については,従来から主張している通り「四つのコミットメント」を説明したが,社名がボーダフォンからソフトバンクモバイルに変更する10月1日以降の具体的戦略については明言を避けた。

 孫社長が掲げたコミットメントとは,(1)第3世代携帯電話(3G)ネットワークの増強,(2)3G端末の充実,(3)コンテンツの強化,(4)営業体制およびブランド力の強化――である。

 (1)については他のコミットメントより具体的に説明。2006年度末までに計4万6000カ所の基地局を設置し,“どこでもつながる”携帯にすることを強調した。孫社長は他事業者が800MHz帯という電波の伝搬特性上有利な周波数帯を他社が持っていることを挙げつつも,「お客様に許認可をいつまでも言い訳にはできない。つながる携帯を提供しないといけないので,言い訳抜きで構築していく」と断言した。

 基地局の工事やそのための人材も既に手配しているとし,資金調達の目処もたっているとした。旧ボーダフォンでは年間2000数百億円程度の設備投資をかけていたがこれを前倒し。「今年度は4000数百億円に増やしたい」(孫社長)と述べた。

 高速データ通信技術であるHSDPA(high-speed downlink packet access)は10月1日,都心部を中心に6500の基地局で開始する。今年度中に「9200局までHSDPAを拡張していく」(孫社長)と説明した。また「WiMAXなどについても新たな周波数をいただけるよう鋭意準備中」と従来の主張を繰り返した。

 (2)の端末について,説明会では既存機種の紹介に終始。ただし10月1日以降「無線LAN機能付きの携帯電話が出る」(ボーダフォンの宮川潤一取締役)ことは明らかにしている。無線LAN機能付きの携帯端末は,ノキア製の3G/無線LANデュアル端末や,台湾HTCのWindowsモバイル搭載端末などの登場が予想される。

 (3)のコンテンツ強化は,「ボーダフォンライブ!」(「Yahoo!ケータイ」に名称変更予定)のトップにYahoo! JAPANへのリンクを配置したことなどを説明。「ボーダフォン・ユーザーからYahoo! JAPANへのアクセスが(リンクを)入れた日から6倍になった」(孫社長)とヤフーとの相乗効果を述べた。また,10月1日から「Yahoo!ケータイボタン」の正式に利用できるようにするとした(写真2)。

 (4)の営業体制およびブランド力強化は,特に法人営業体制の充実を図ることを説明。日本テレコムの法人営業約1500人をフル活用して,法人顧客の開拓を進めるとし,また法人向けに携帯と固定の融合であるFMC(fixed mobile convergence)サービスを提供するとした。