加藤隆志・取締役生活雑貨部長は、すべての商品タグ(値札)をボードに張り出してから集約に取り組んだ
加藤隆志・取締役生活雑貨部長は、すべての商品タグ(値札)をボードに張り出してから集約に取り組んだ
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 「無印良品」を展開する良品計画が、商品1点1点に取り付けるタグ(値札)を刷新した。これまで衣食住の全商品で合計203種類もあったタグを、半分以下の98種類まで集約。タグの制作を委託するメーカーも従来の26社から2社まで絞り込んだ。

 これまで良品計画は、商品の説明文を書き添えた無印カラーの茶色のタグに強いこだわりを持ち、社内にはタグに手を付けるのはアンタッチャブルという暗黙の了解があった。同社は商品に独自のタグまで取り付けて初めて、無印良品の商品が完成すると考えている。そのため、商品が増えるたびに大きさも形も異なる様々なタグが社内にあふれ、タグの共通化が遅れてコスト高の要因になっていた。委託先も膨らむ一方だった。

 だが、売上高販売管理費率を引き下げるプロジェクト「30%委員会」を2004年8月に立ち上げた松井忠三社長の一声で、無印良品の命ともいうべきタグの改革が始まった。30%委員会のなかでタグの改革を指揮することになった加藤隆志・取締役生活雑貨部長は松井社長の後ろ盾を得て、昨年夏に今後1年でタグの種類を半減し、メーカーも集約すると社内に宣言。まずはタグの実態調査に乗り出した。

 社内では誰もタグの現状をすべて把握していなかったので、最初にすべてのタグを洗い出すため、加藤部長は大きなボードにタグを張り出すことから開始。そこで初めて203種類もあったことが判明した。

 加藤部長は3分の1の70種類まで減らせないかと考えたが、結果的には商品部門との協議の末、この5月までに約半分の98種類まで減らした。メーカーは国内外の取引先を交えた公募の末に2社に絞って大量発注する代わりに単価を下げた。これで年間2億5000万円のコスト削減が可能になった。

 タグを集約する過程では、商品開発部門から反発があった。彼らは今まで通り、商品に合ったサイズとデザインのタグを1つひとつ作りたがる。メーカーを2社に絞れば、タグの供給が滞るのでないかと心配もした。

 そこで加藤部長は生活雑貨と衣料品、食品の3つの商品カテゴリーの責任者を集め、タグは大が小を兼ねるのか、小が大を兼ねるのかといった議論を一緒に進めて、落とし所を決めた。メーカーの選定はタグの単価だけではなく、良品計画の商品の生産委託先がある中国や東南アジアで同じようにタグを生産できることなども勘案に入れてタグの安定供給を話し合った。こうしてタグの集約は約1年がかりで進められた。

※良品計画の経営改革「30%委員会」については、日経情報ストラテジー2006年9月号で詳しく取り上げています。