テルモ情報戦略部の村田光一部長
テルモ情報戦略部の村田光一部長
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 医療機器大手のテルモが推進する全社IT改革プロジェクト「テトラプロジェクト」が大詰めに差し掛かっている。2006年2月から、甲府工場のシリンジ(注射器)など大量生産品の製造ラインで、新しい需要予測システムの適用を始めた。マニュジスティックス・ジャパン(東京・渋谷)とi2テクノロジーズ・ジャパン(同)の需要予測パッケージソフトを併用。欠品が許されない製品のため、従来は在庫を多めに持っていた。需要予測の精度を高めながら、月次だった生産計画のサイクルを週次に変え、在庫削減を目指す。

 プロジェクトは2003年5月に開始。20年近く使ってきた旧システムを廃棄し、売上高2500億円という規模の大企業に成長したテルモに合ったシステムに作り変えるのが狙い。「人事」「経理」「情報系」「生産・物流・販売」の4分野で社内システムと業務プロセスを全面的に刷新する。「人事」「経理」「情報系」の開発は一段落しつつあり、現在は需要予測も含めた「生産・物流・販売」の開発・展開を中心に進めている。

 「人事」については、年内をメドに、社員の能力を細かく管理する「スキルズマップ」システムを稼働させる。技術者なら「○○素材に強い」「電気工学に詳しい」といった専門知識や、語学力、マネジメント能力などを本人の自己申告と上司の評価の両面で評価してシステムに入力。新規事業立ち上げのメンバー集めや異動のための判断材料として生かす。

RFPと相見積もりを定着させ、コスト削減

 プロジェクト全体を主導するのは、情報戦略部の村田光一部長。外資系石油会社の情報システム部門に長年勤めたのち、プロジェクト開始とほぼ同時期にテルモに入社した。スキルズマップも外資系企業の仕組みを参考にした。

 プロジェクト全体の総投資額は約50億円。「かなり安く抑えた」(村田部長)という。コスト削減のために、パッケージソフトを積極的に採用し、カスタマイズを最小限に抑えた。作業を外部委託するときには、「調査」「実際の開発」といった形で作業を分割して作業量を見えやすくし、コストが膨れ上がらないように工夫した。

 「私が来るまでは、情報システム部員はRFP(提案依頼書)を作ったことがなかった」(村田部長)。村田部長は、システム開発を外部に発注するときに、社内でシステムの仕様などを明示したRFPを作成し、必ず複数のITベンダーから見積もりを取ることを徹底するようにした。