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 郵政民営化の準備会社である日本郵政は7月31日、民営・分社化後の経営方針を示す「実施計画の骨格」を政府に提出した。貯金事業を引き継ぐ「ゆうちょ銀行」の提供サービスとして、2007年10月の民営化後早期に、民間の金融機関との送金・決済ができるようにすると明記した。銀行間の為替取引を処理する「全銀システム」と、郵便貯金システムを接続する方向で、今後調整を進めていく。

 現在は、一部の金融機関を除き、郵便貯金の口座と民間の金融機関の口座の間で直接送金・決済ができない。ATM(現金自動預け払い機)で郵貯口座からいったん現金を引き出し、その現金を銀行口座に預け入れるといった手間がかかるのだ。民営・分社化後に、民間の金融機関並みのサービスを目指すゆうちょ銀行にとって、全銀システムへの接続は不可欠といえる。

 郵便貯金システムを全銀システムに接続するには、勘定系システムに全銀接続用の機能を追加するか、あるいは全銀との接続を担う「中継システム」を勘定系システムの外側に開発するといった方法がある。ただし、勘定系システムは、民営・分社化対応で4万3000人月に及ぶ手直しをしている真っ最中。全銀システムへの接続機能を追加するとなると、システム開発のリスクが高まる。そこで日本郵政は、中継システムを新規開発する方向で、検討を進めていくとみられる。

 中継システムには、旧大和銀行(現・りそな銀行)の勘定系システム「NEWTON」を採用する可能性が高い。NEWTONは昨年9月まで、旧大和銀の勘定系システムとしてりそな銀行が使っていた。現在も、りそな銀が信託系システムとして、一部の機能を利用している。NEWTONのソフト資産は、システムを開発した日本IBMが、2004年4月にりそな銀行から買い取っている。

 ただ、7月31日に「実施計画の骨格」について記者説明会を開催した日本郵政は、全銀システムとの接続方式や製品選定に関する本誌の質問に、「まだなにも決まっていない」(高橋亨 執行役員郵便貯金銀行担当部長)と回答した。

 記者説明会に先立って開催した記者会見で、日本郵政の西川善文社長(写真右)は「民間企業としての創造性、効率性を発揮し、自由な企業活動を行い、社会と地域の発展に貢献する観点から(骨格を)作成した」と説明した。竹中平蔵総務相(写真左)は「郵政民営化により経営の自由度が増せば、利用者の利便性向上につながる」と期待を述べた。