NTTドコモの中村維夫社長
NTTドコモの中村維夫社長
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 NTTドコモは7月28日,2006年度第1四半期(2006年4月1日から2006年6月30日まで)の連結決算を発表した。連結の売上高は対前年度比で2.7%増の1兆2186億円,営業利益は同5.2%減の2727億円の減益となった。第三世代携帯電話「FOMA」の契約数増加に伴って,端末機器原価の上昇と代理店への手数料が膨らんだことが減収につながった。

 解約率は0.64%と前年同期と比べて0.16ポイント下がり,過去最低を記録した。今年11月1日までに導入が予定されている,携帯事業者を変更しても同じ番号が継続利用できる「番号ポータビリティ」を直前にしてユーザー側が解約を控えた点と,各種の囲い込み策が影響した。

 同社の中村維夫社長(写真)は会見で,2006年夏に開始予定としていた,これまでのFOMAの10倍の下りデータ通信速度を実現するHSDPAサービスについて,8月下旬にサービスを開始することを明らかにした。まずは既に発表済みの「N902iX」と「M2501」の2機種で対処し,来春をメドにさらに2機種を追加する。将来は「FOMA 90Xシリーズへ標準搭載していく方針」(中村社長)とした。当初は通信速度は下り最大3.6Mビット/秒だが,需要を見つつ14Mビット/秒まで増速する計画という。

 対応機種が1機種のままとなっているワンセグについては,「出荷台数は10万台を突破し,かなりの人に受け入れられている。ワンセグ機能も従来の1/2から1/3のコストで実現できるメドが付いたので,さらに4~5モデルに載せていきたい」(中村社長)とした。ただし,まだ携帯電話事業者にとって有力なビジネスモデルが見出せていないのには変わりがないとし,「あくまでユーザーの嗜好に合わせるという意味で端末を出していく」(同)と付け加えた。
 なお10月に開始を予定しているiモードの検索機能については,既に発表済みの検索サイト9社に加えて,新たにgoogleが参加することも明らかにした。

SIMロック見直しは「影響範囲は計り知れない」

 中村社長は,総務省が7月に発表した「IP化の進展に対応した競争の在り方に関する懇談会報告書(案)」についても触れた。報告書案では,2006年中にもMVNO(仮想移動通信事業者)の新規参入促進についてルールを整備する方針が明記されている。これに対して中村社長は「MVNOは事業者間で話し合うべきもの。両者がWin-Winの関係になって初めて成立するものであり,義務化には反対」と,従来からの主張を繰り返した。

 同じく報告書案が示していた端末のSIMロックの見直しに向けた検討についても言及した。SIMロックとは,携帯電話に差し込んで使うSIMカードを,別の端末では利用できなくする仕組み。携帯電話事業者は販売奨励金(インセンティブ)を積み増して端末を販売している関係上,そのコストを回収するために,端末をある一定期間利用してもらう必要がある。そのため現在日本で販売されている端末のほとんどにSIMロックがかけられているのが現状だ。中村社長は「端末のSIMロックを解除すると,現在の携帯電話のビジネスモデルが激変する。この問題については良い面と悪い面があり,簡単に答えを出しにくい」とコメントした。

 SIMロックを外すと,インセンティブによって低価格を実現している端末の価格が高騰することが予想される。「経営的には定価で端末を売ることがベストだが,はたして5万円台の携帯電話をユーザーが買ってくれるのか」(中村社長)。またSIMロックを外すことで,現在は携帯電話事業者のサービスの一部としての位置付けが強い端末が,メーカーが販売する端末としての性格が強くなる。「携帯電話の進化を考えた場合,メーカーの電話機であってよいのか。影響範囲は計り知れなく,広範囲な議論が必要」(中村社長)と慎重な姿勢を見せた。